関西ソニョシデ学園

過去に生きるK-Popのブログ

第792話 そに散歩 〜フィリピン編〜(その4)


03:バゴ

ナレーション:続いて一行がやって来たのは、バコロドから空港を通り過ぎ、クルマで20分ほど走った辺りの大自然豊かな里です。

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ソニ「なんじゃなんじゃ、また田舎に連れてこられたど。ここは何処じゃ」
アイリーン「どうやらバコロドに隣接しているバゴ市ってとこみたいですね」
ソニ「市? 見渡す限りサトウキビ畑と何処までもまっすぐな道しか見えへんのに? たまにボロボロのトライシクルやちっこいジプニーが通るだけやのに?」
ウェンディ「村と呼ぶのも憚られる光景ですね」

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アイリーン「そやけど、人口は17万人もおるらしいよ」
ソニ「うそーん」
ウェンディ「全員カプセルに入れられて地下で眠っとるのかも」
ソニ「『マトリックス』やあるまいし」
アイリーン「一応この州では3番目に大きい市って書いてありますけどね」
ソニ「(ふん)Wikiなんか当てにならんちゅうねん」
ウェンディ「それにしてもこんななんもないとこに連れてきて、スタッフはウチらに何を期待しとるのでしょうか?」
ソニ「そら地元の人とのふれあいに決まっとる。オリジナルの『ちい散歩』、『鶴瓶の家族に乾杯』、『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』、すべてタレントが見知らぬ土地で土着民と無駄話をするのが面白い訳じゃ」
ウェンディ「自分で『ちい散歩』をオリジナルって認めちゃあかんでしょ」
ソニ「ほな『前川清の笑顔まんてん タビ好キ』でもええけど」
ウェンディ「急にローカル番組になったな」
アイリーン「あ、向こうからトライシクルに乗った人が来ますよ。ちょっと訊いてみましょう」
ウェンディ「止まってくれるかしら?」
アイリーン「ウチの美貌を見て立ち止まらない人間はおらんよ」
ウェンディ「自分でゆうか?(呆)」
キキーッ
ソニ「あ、ホンマに止まった」
アイリーン「やはりウチの美貌は万能。鎮西八郎為朝が雁を射落としたくらい確実に人の足を止めるのです」
トライシクルのおっさん「いや、裕福そおな外人おるから、なんかくれるんかと思うて」
ソニ「(かくん)美貌関係ないやん」
アイリーン「我々はテレビ番組でこの辺りを旅しておるのですが、どこか充電させて貰える場所はありまへんか?」
ウェンディ「(ずこっ)マジで哲っちゃんになっとるし」
トライシクルのおっさん「電気が来とる場所ゆうたら、この先にガッコあるからそこで頼めばええんちゃう?」
アイリーン「学校あるんでっか?」
ソニ「こんな人っ子ひとり見かけん田舎でも、生意気に学校あるんやな」
トライシクルのおっさん「失礼やな。この辺りは子ども仰山おるって」
ウェンディ「ほななんで誰も見かけんのでしょう? やはりカプセルに入れられてAIの動力源にされているのでしょうか?」
トライシクルのおっさん「なにゆうとるのかイッコも理解できんけど、こんなクソ暑い昼間に外をうろついとる人間はおらんて」
アイリーン「ほな皆さんどちらに?」
トライシクルのおっさん「男どもは、サトウキビの収穫を朝の涼しい内に済ませて、この時間はヴィクトリアスの製糖工場へ納品に行っとる。女どもは日差しを避けて家ん中で繕い物をするか絹を織るかしとるし、子ども達は学校じゃよ」
ソニ「なるほど。ゆわれてみれば至極まっとうなことやった」
ウェンディ「やっぱり基幹産業はサトウキビの収穫なんですね」
トライシクルのおっさん「砂糖の島やからね」
ウェンディ「そやけど、砂糖が採れない時期はなにしてはるんでっか?」
トライシクルのおっさん「は?」
ウェンディ「そやから農閑期ですが。日本に出稼ぎ行って酒の仕込みとかやっとるんでっか?」
トライシクルのおっさん「あんた、さっきからよおわからんことゆうね。サトウキビは採っても採ってもあとから生えてくるで。一年中取り放題や」
ウェンディ「なんと」
アイリーン「ピリピンには雨季と乾季くらいしか季節ないからね」
ソニ「ほな一年中こんなに暑いんかい。たまらんなぁ」
ウェンディ「きちんと四季が巡ってくるウリナラのなんと美しくありがたいことでしょう」
トライシクルのおっさん「アホかいな。一年中サトウキビ採れた方がありがたいに決まっとる。どーでもええけど、いろいろ教えたったんやから、なんかちょーだい」
ソニ「うーむ。他人にたかることをさも当然の様に」
ウェンディ「なんの羞恥もないっすね」
アイリーン「まぁ、持てる者が持たざる者に施すのはキリスト教ではごく普通のことですけどね」
ウェンディ「そやけど、何あげます? ウチら何の用意もしてまへんで」
アイリーン「こんなこともあろうかと…(ごそごそ)ウチが用意しておきました」
ウェンディ「え?」
アイリーン「はい、ステッカー」

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ソニ「わぁ、なんじゃ」
ウェンディ「完全に充電旅にする気やな(呆)」
アイリーン「充電はウチにとって死活問題やもん」
トライシクルのおっさん「なんや、これ? こんなもん貰うても腹の足しにならへんで」
アイリーン「これは日本で人気のノベルティです。非売品なんで希少価値が高い。メルカリで売れば5000ペソにはなりますよ」
トライシクルのおっさん「マジで?(やったーっ)」
ウェンディ「メルカリは理解できるんかいっ!」
ソニ「電波届きそおもない田舎やのに、意外にちゃっかりしたおっさんやの(笑)」

ナレーション:てことで、一行はトライシクルのおとうさんに教わった通り、炎天下の道を歩いて学校を目指しました。

ソニ「(だらだら)もお30分近う歩いとるど」
ウェンディ「『帰れマンデー バスサンド』みたいですねぇ。おねえ、大丈夫?」
アイリーン「寒いよりはええ。電池保つから」
ソニ「そおなん? 電池て寒い方が保つんちゃうの? 冷蔵庫に入れて保管するし」
アイリーン「そんなん関西独特の迷信ですわ。普通は寒冷地の方が早よバッテリー消耗しますで」
ソニ「へー、全然知らんかったわ」
ウェンディ「あ、なんか見えてきましたで。塀がある。あれが学校かなぁ」
ソニ「こんな文明レベルの低いところに塀のある民家なんかないやろから、多分ガッコやろ」

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わいわい、がやがや
アイリーン「制服を着た少女たちが仰山いますね。中学校なんでしょうか」
ウェンディ「訊いてみましょう。ハーイ、ユーガイズ、ここは学校でっか?」
学生「そないだす~」
ウェンディ「中学校なの?」
学生「中学もあるけど小学校もありまっせ」
ソニ「あー、小中一貫なんやな」
学生「そおでっけど、幼稚園や高校が一緒のとこもあります」
ソニ「は?」
アイリーン「(検索)ピリピンの義務教育は幼稚園を含む1-6-4-2制のよおです」
ウェンディ「ほえー」
アイリーン「ウチら充電出来るとこを探してるんやけど、先生に訊いてみてくれへん?」
学生「ええけど、見返りになんかくれまっか?」
ソニ「う~む、徹底した物乞い精神やな」
女教師「こらっ、あなた方はそんな恥ずかしい要求をして。教室に戻ってなさい!」
学生「しおしお~」
ソニ「おっ、ファイヤーダンスの踊り子が出て来た」
女教師「誰が常磐ハワイアンセンターのダンサーでっか!(怒) ウチはここの教員です」
ウェンディ「あ、先生でっか。これは失礼しました」
女教師「ここは将来豊かな子ども達に意義ある教育を行う神聖な場所。部外者の立ち入りは禁止ですよ」
アイリーン「そおかもしれまへんが、ウチらは怪しいもんではありまへん。韓国のテレビで、充電させて貰える場所を探し回る番組をやっておるところです」
ソニ「主旨を勝手に変えるな(怒)」
女教師「韓国のテレビ? …ああっ、あなた方は!」
ウェンディ「ん?」
女教師「レ、レ、レ…」
ソニ「誰がレレレのおじさんじゃい!」
アイリーン「レレレのおじさんと高畑勲版『赤毛のアン』のマシュウ・カスバートは同じ声優(ひと)」
ウェンディ「『赤毛のアントリビアの検索早っ(呆)」
女教師「レ、レ、Red Velvetのアイリーンさんとウェンディさんやおまへんか」
ウェンディ「お、ウチらのこと知ってはるんでっか?」
女教師「勿論ですわ。なんちゅうても我が家には映るテレビありますさかい(えっへん)」
ソニ「(こけっ)威張るよおなことか?」
女教師「それはもお。この町には拾うて来た映らんテレビを見栄のために居間に置いてる家庭も多いのです」
ウェンディ「マジで?」
女教師「そこゆくと家(うち)なんか映るテレビだけやなく動くビデオCDプレイヤーもありますから。それでいつもRed VelvetはんのMV観さして貰うてますぅ。ビデオCDはマニラ行った時に買いました」
ソニ「DVDやなくビデオCD? いつの時代の話や(驚)」
アイリーン「ウチらのMV、ビデオCDで出てたっけ?」
ウェンディ「多分Youtubeから違法に焼き込んだモノを買わされたんでしょう」
女教師「我が家にある数少ないソフトの一枚ですわ」
ソニ「よーし、レッベルのペンとなれば話は早い。このロボット三等兵に充電させてもろうとる間に、ウチらには涼しいところで冷たいモノでも馳走してくれい」
女教師「あんただれ?」
ソニ「(かくん)レッベル知っとってウチは判らんのかいな」
ウェンディ「この方は少女時代のサニーねえさんですよ」
女教師「少女? どー見てもおばはんのよおですが?」
ソニ「(ウキーッ)貴様、ゆうてはならんことを! 少女時代は半島北部で絶大な人気を誇るアイドルやど。黒電話みたいな髪型のおっさんにゆうて飛翔体撃ち込んだるからな」
アイリーン「まぁまぁ、落ち着いて。国際平和を乱したらあきまへんて」
女教師「とにかくRed Velvetご一行となれば校内に招かざるを得ませんね。子ども達も喜ぶでしょう」
ソニ「(ふん)最初からそおゆえや」

ナレーション:若い女教師に案内されて、3人は校長室へ。校長先生は恰幅の良い中年の女性です。

校長「ようこそいらっしゃいました。校長のオカンポです。話はフローレス先生から伺いました」
ソニ「フローレス? 自分、そんな洒落た名前やったん?」
女教師「フローレスは名字です。スペイン語で花ゆう意味です」
ソニ「ほなファーストネームは?」
女教師「ジェシカゆいます~」
ソニ「(かくん)そ、その名前は訳あって呼びづらい。フローレスで通すわ」
女教師「どーゆーことでっか?」
ウェンディ「T-araでゆうとファヨン先輩みたいなもんです」
女教師「あー、なるほど」
ソニ「納得すんな、だいぶ事情がちゃうわ。ちゅうかT-ara知っとって、なんでウチを知らん?」
女教師「さぁ」
校長「これ、コンセント(ほい)」
アイリーン「おおきに、すんまへん。ほな使わせて貰いますわ(カチ)」
校長「残りの方々の希望はなんでっか?」
ソニ「出来れば冷房の効いた部屋で冷たいモンご馳走して貰うて、いっとき昼寝でもしたいですわ。炎天下結構歩いたんで疲れました」
校長「冷房?(キョトン)」
ソニ「あかん、クーラーが通用せんぞ」
アイリーン「どおやら未知の単語みたいですね」
ウェンディ「まぁ学校中見渡しても窓開けっぱなしですもんね。奥の方の教室なんて、木や竹で適当にこしらえたスカスカの建てもんやし」
校長「よお判らんけど、アイスアメリカノはありますよ。飲みますか?」
ソニ「お、それはありがたい」
校長「ほな用意しますよってそこら辺に掛けてお待ち下さい。砂糖入れます?」
ソニ「いや、ブラックで」
ウェンディ「ウチも」
女教師「アイリーンさんは?」
ソニ「そいつは電気食っとるから大丈夫。コーヒーはいりまへん」

ナレーション:待つことしばし、校長と若い女教師が隣の部屋から、あまり冷えてる様には見えないアメリカノをコップについで持って来ました。

校長「どぞー」
ソニ「おおきに。ほないただきます(ぐび)…ん?」
ウェンディ「いただきまーす(ちゅるる)…こ、これは!」
女教師「どないしました?」
ソニ「いや、砂糖いらんゆうたんやけど、ばっちり甘々に入っとるやないか」
女教師「特に砂糖足してはおまへんよ」
ソニ「いや、足すとかそおゆう問題やのおて、ハナからいらんのやって」
校長「ここは砂糖の島ネグロス。砂糖を入れない飲み物で客人をもてなすことは考えられまへん」
ソニ「マジで?」
ウェンディ「そやから校長先生の恰幅がええんですね」
ソニ「仕方がない。喉が乾いとるから、これはこれでいただこう(ぐびぐび)」
ウェンディ「それにしても、校長室に来る途中校内をある程度見させていただきましたが、先生は女性の方がほとんどなんですね」
校長「そうです。我が校には男性の教員はひとりしかおりまへん。彼は生まれつき足が悪くて、農業に従事できないので教員となったのです」
ソニ「なるほど~。男は頭脳より体力を要求されるのか」
ウェンディ「せっかくこんな学校があって、高校まで義務教育化されてるのに、勿体ない話ですね」
校長「フィリピンでは大都会でもそれほど仕事が多い訳やありまへん。ましてや高度な教育を経て就ける職業はほんの一握りです。実家の農業でさえ、継げるのは長男や次男くらいまでですから、ほとんどの子は高校を出ても仕事がないのです」
ウェンディ「そーなんかぁ」
校長「国際NGOオイスカなどが植林や養蚕などで産業を創出しようとしていますが、町全体が豊かになるには相当長い目で見ていかなければなりません。結局仕事がない子らは、10代で早々と子どもを産んで、仕事もないのに結婚せざるを得ないのです」
ソニ「ひえーっ」
校長「この町は子どもだらけなんですわ」
ウェンディ「それで、この学校やたらと生徒が多かったんやな」
女教師「子どもの人口に対して、学校の数は全然足りてまへん。立派な校舎がある我が校は恵まれてる方で、島中央のカンラオン山の方へ行くと、露天で勉強を教えているところもあります。20年ほど前はバゴを称して“世界一貧しい町”と言うておったほどです」
ウェンディ「カトリックは中絶に厳しいからなぁ。そら子どもも増えまっせ」
ソニ「ちゃんと避妊教育とか避妊具配るとかした方がええんちゃう?」
校長「やってますけど、なかなか結果が出ないんですわ。若い子はすぐメンド臭がっちゃって」
ソニ「そやなぁ。性に目覚めた10代の若者は獣と一緒やから」
ウェンディ「こらっ!」
校長「そんな訳であなた方、アジアの大スターなら、学校をバンバン建てて、教員もジャンジャン雇えるよお大量に寄付出来るでしょう。ぜひお願いしますわ」
ソニ「なんでやねん」
校長「持てる者が持たざる者に…」
ソニ「またそれかい」
女教師「あなた方の宇宙リーダーかて、こないだ大韓赤十字社に1億ウォンも寄付しはったやないでっか。女優に転向した末っ子は国際NGOグッドネイバーズに誕生日イベントの売り上げ全額を寄付したし」
ソニ「ちっ、あいつらいらんことしよって…ん? 自分、少女時代のこと知らんってゆうたやないか」
女教師「寄付のことを考えたら脳が活性化されて、いま思い出しました」
ソニ「なんちゅう現金な脳みそや(呆)」
校長「日本のキャバクラのオーナーすらここに学校建ててくれたんですから、アジアを股にかけて大もうけしてはる少女時代なら100個くらい学校建てれるんちゃいまっか? ほんでウチの給料もちょっと上げて下さい。亭主仕事あらへんさかい、ウチが食わせてるんでっせ」
女教師「ウチとこもですわ。食べ盛りの子ども4人おるし」
ソニ「(むきーっ)他人から恵んで貰うことばっか考えてへんと、もっと働けーーーっ!」






ビデオCDと言えば、2009年に仁川空港の土産物店で『カンナさん大成功です』のビデオCDを買ったことがある。買う時にはDVDと思い込んでいたのだが、帰国して見てみたらビデオCDであった。道理でえらい安いと思ったよ。画角が横360ドットか240ドットで非常に小さく、とても映画鑑賞には向かなかった。

※砂糖を入れたコーヒーについてはほぼ実話。ただしバコロドでの逸話。「入れるか?」と訊かれたので「いらない」と答えたのだがめちゃめちゃ甘いコーヒーが出て来た(笑)。案内してくれた現地の人によると、この島で砂糖を入れてないコーヒーは存在しないらしい。なら訊くなよ(爆)

※実際に私が行った学校も女教師だらけだった。ハイスクールと書いてあるが、これはジュニア・ハイも含んでいる。教員の給料は月額7万円ほど。島内で暮らすには不足ないようだが、贅沢が出来るほどでもないらしい。
 学生は皆明るく無邪気だが、大体14~15歳くらいになるとすでに童貞君や処女はいない様子。在学中に妊娠する子も少なくないとのこと。日本からの援助が大量のゴム製品となって配布されているが(これには性病予防の意味合いもある)なかなか浸透していない。とにかく至る所に小さな子供がいて、大人よりずっと数が多い。少子化に悩む日本とは別世界の光景である。
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