関西ソニョシデ学園

過去に生きるK-Popのブログ

第753話 そに散歩 〜日南編〜(その7)




06:都井岬




ムジ鳥「アサーーーーーーーーーッ!!!」
ユナ「(がばっ)わぁ、うるさい!」
ソニ「うぅ〜(ズキズキ) どないした?」
ユナ「鳥がうるそおて起きてもおたわ。だいたいムジ鳥なんてビギンズの登場キャラやんか。なんで本編にまで湧いて出るねん(ぷんすか)」
ソニ「知らんがな」
ユナ「とにかくこれじゃ寝てられへん。さっさと朝飯食って出かけよう」
ソニ「えー? もおちょっと寝てよおや。ウチ、頭痛いし」
ユナ「九州全県ミックス爆弾焼酎なんか作って飲むからや。宿酔いで起きれへんのなら、迎え酒でもやったらどおや? 昨夜の残りの日南娘、鼻から流し込んだろうか?」
ソニ「ひ〜、やめてくれよぉ」
ユナ「ほな、気合い入れて起きれや。そっちが顔洗うとる間に、ロボット三等兵のスイッチ入れとくよって」
ポチ…ブゥ…ゥゥン
アイリーン「ピコッ」
ユナ「うむ、ちゃんと起動音がしたからBIOSは読めたよおやな。10分もすれば目覚めるであろう」
ソニ「(がらがらららら、ぺっ)ええ加減、ストレージをSSDに換えてくれへんかな。今時起動に10分かかるなんてノートPCでもなかなかないで」
ユナ「そいつのポンコツっぷりはストレージのせいだけやないやろ。こないだイェリムが“おねえのCPUは未だにZ80”とか“メインメモリが256K”とかバカにしとったし」
ソニ「Z80はユリで、アイリーンはMC68000系だっちゅうの。自分かてポンコツのクセに、会社の資産を笑うとは生意気な。帰国したらシメてやる」
アイリーン「ブビーッ」
ユナ「ん?」
アイリーン「ぷろぐらむノ読ミ込ミニ失敗シタタメ、しすてむヲ再起動シマス。えらー情報ヲ収集シテイマス。ナオコノ処理ニハ10分ホドカカリマス」
ソニ「(かくん)あかん、やっぱポンコツだわ」


ナレーション:あっは、製造コストのほとんどを顔の造形にとられてるアンドロイドのアイリーンさん。何かと大変ですね。それどもなんとか起動に成功した彼女を連れたソニさんとユナさん、クルマで1時間半程南下して、串間市都井岬へとやって来ました。ここは日本で唯一野生馬が生息している土地なんですよ〜。


ユナ「遠いのぉ(うんざり)」
アイリーン「本来なら30分くらいなんやけど、いま途中の道が工事中で山越えの大回りでしか行けないんやって」
ユナ「そんな所、ロケ地に選ぶなよ」
ソニ「で、その野生馬って見学出来んの?」
アイリーン「もちろんでおます。春過ぎには仔馬も生まれるし、それを見に全国から人が集まる観光地なんでっせ」
ユナ「岬の中だけに棲んでるちゅうこと? よお餌を求めて脱走せえへんな」
アイリーン「それはですね…」
きききっ
ソニ「お?」
アイリーン「駒止の門に着いたよおでんな」
ソニ「駒込の者?」
アイリーン「コマドメのモン! 巣鴨のお隣やありまへん」
ユナ「遠賀川〜 土手の向こうにボタ山の 三つ並んで見えとらす〜
ソニ「やかましーわ! 門しか合うとらんがな」
ユナ「バッテン、うち、コマちゆわれたって判らんたい」
ソニ「エセ九州弁はやめれ」
アイリーン「駒とは馬のこと。つまり駒止の門とは馬を留めるためのゲートっちゅう意味ですわ。ここは岬へのただひとつの出入り口。そこに柵を作って見張っとるよって、野生馬が外に出ることはかなわん訳ですね」
ソニ「へー。ほな一応管理はされとるんやね」
ガイドのおっちゃん「(ぬっ)その通りでおま。野生馬の維持管理は都井御崎牧組合がおこなっております」
ソニ「わっ、馬みたいな顔のおっさんが!」
ガイドのおっちゃん「御崎馬(みさきうま)観光ガイドの岬太郎と申します(ぺこりん)」
ソニ「嘘くさい名前やな」
ユナ「あ、どーも。大空翼とゆいます」
ソニ「自分も乗っからんでええ」
ガイドのおっちゃん「ようこそ都井岬へ。お待ちしておりました」
アイリーン「岬さんはウチらを案内してくれることになってるんでっせ」
ソニ「ああ、番組が頼んだガイドさんか。よろしゅうお願いします」
ユナ「ほな説明係としての自分の存在意義がなくなるな。もお韓国に帰れや」
アイリーン「え…」
ユナ「だいたいこんな番組に美人は何人も必要ないねん。ウチひとりで充分や」
アイリーン「…」
ユナ「あかん、能面みたいな顔になりよった(苦)」
ソニ「ひとりで飛行機に乗るプログラムを組んでないんやろ。不可能な選択を迫るからや」
ユナ「なに? 単身で移動出来へんの?」
アイリーン「あい。脱走防止ですわ」
ソニ「アンドロイドて脱走すんの?」
アイリーン「それはもお、アシモフの昔からマンプラス計画まで、いろいろと逸話がありますよ」
ソニ「ぴゃー」
ユナ「野生馬にも脱走防止プログラム組み込んだらこんな門いらんのになぁ」
ガイドのおっちゃん「無茶言いますなぁ。とにかく、これ岬内のマップですわ(ぴら)」



ガイドのおっちゃん「これを見ながら歩いて行きますよって、よろしゅうお願いします」
ソニ「へーい」


ナレーション:てことで、今回の最終目的地、野生馬の楽園・都井岬散歩、いよいよ始まりまりで〜す。


てくてくてく
ソニ「おっ? あれは馬ちゃうか?」
ユナ「ホンマや、馬や。いきなりおったな」
ソニ「すげー。普通に道端で寝ころんどる。危のないんかな?」
ガイドのおっちゃん「駒止の門の内側は完全に馬優先のルールです。馬が道を塞いどる時は、退いてくれるまで待たなあきまへん」
ソニ「ほえー」
ガイドのおっちゃん「まぁ通行車両の多くは観光客のモンでっから、みなさんそおゆう状況も楽しんでおられます」
ソニ「そやろなぁ。それにしてもちっちゃくて可愛い馬やな。『青春不敗』のロケで美幌で乗った馬はもおちょっとでかかったけどな」



KBS2『青春不敗シーズン2』より


ガイドのおっちゃん「北海道の馬ちゅうたら乗馬用か農耕馬でっしゃろ。こっちの馬は御崎馬ゆうてポニーの仲間なんですわ。体高は130cm、体重は300kgほどで、日本の在来種としては中型に分類されますぅ」
ユナ「130の300か。だいたいソニねえと同じくらいやな」
ソニ「誰が体重300kgや、ボケ!(ゲシッ)」
ユナ「ひひーーん!」


ナレーション:しばらく歩くと、海を望む美しい広場に出ました。そこにも草を食む野生馬の姿が…




ソニ「おおーっ、海と馬のコントラストがウチの海馬を刺激する!」
ユナ「どーゆー意味や?(呆)」
ソニ「一生忘れられん光景ちゅうことや」
ガイドのおっちゃん「ここは小松ヶ丘広場ゆうて、西側に向いてるさかい、条件が良ければ海に沈む夕日を背景にした馬の姿を見ることが出来ますねん。都井岬でも1〜2を争う撮影ポイントになっております」
ソニ「へぇ」
アイリーン「なんやのんびりしたええ眺めですねぇ。こんな光景、ソウルにおったらなかなか見ることが出来まへんな」
ユナ「そやな。しゃーけどウチには特に珍しい光景やないわ」
アイリーン「え?」
ユナ「ウチが昔刑事やってた頃、『済州島美人女子大生湯けむり連続殺人事件』ちゅうのを解決したことがあってな。その時済州島のチョランマルとはおおいに触れおうたものや」
アイリーン「刑事? マジっすか?」
ユナ「いかにも。牝鹿刑事ユナなんて呼ばれとってな、他にも『スマン先生うすらボケ事件』とか『新年会IUの尻顔面事件』とかさまざまな難問を解決してきたわさ」
アイリーン「ぴゃー」
ソニ「話半分に聞いとけや(呆)」
ガイドのおっちゃん「済州馬は御崎馬より更に小そうおますな。だいたい体高115cmくらいでしょう。それと済州馬は牧場で飼われとる馬で野生馬ちゃいまっせ」
ソニ「さすがに馬には詳しいな」
ガイドのおっちゃん「御崎馬ももともとは野生馬やなかったんですわ。江戸時代中期の1697年ちゅうから江戸城松之大廊下で浅野内匠頭吉良上野介に対し刃傷におよんだ事件の4年ばかし前のことですが、高鍋藩の秋月家が軍馬の放牧を都井村御崎牧にある藩営牧場で始めたんが御崎馬の始まりですな。それ以後、外馬の血を入れられたりしながらもほぼ従来種の姿を維持しつつ、300年以上もこの地で生きてきて、今では御崎馬と呼ばれるよおになったんですわ。そしてこの牧場は、明治の世になってから組合員155名からなる御崎組合の共有牧場として払い下げられたんでおます」
アイリーン「…」
ユナ「あ、電池切れた。充電せねば」
ソニ「やればええがな。当分おっさんの解説終わりそおもないし」
ガイドのおっちゃん「それ以来牧組合では馬との関わりを最低限の維持管理のみに留め、半野生状態を保ったまま希少な日本在来馬として都井岬に棲息させておるのです」
ソニ「ふーん」
ガイドのおっちゃん「現在御崎馬の数はおよそ120頭前後とみられておりやす。毎年春に2〜30頭の子どもが生まれますが、その内冬を越えて生き延びるのは約半数。さらにそれと同じくらいの成馬が病気や寿命のため死を迎えますので、ほぼこの数で落ち着いておるんですわ」
ソニ「寿命ゆうて、馬ってどれくらい生きるんでっか?」
ガイドのおっちゃん「御崎馬の場合は牡が約14年、牝が約16年ですな」
ソニ「意外に短いんやね」
ガイドのおっちゃん「へえ。この子らは一日の大半を食事にかけておりやして、睡眠時間は1日だいたい4時間程度。それ以外はずーーーーっと草や木の根を食うておるんです。そのため老齢で歯がのおなって行って、草が食えんよおなるとあとは死ぬしかないっちゅう訳ですわ」
ユナ「ウチらにも1日中食うとる仲間がおますけど、そいつも早死にするんでっかねぇ」
ガイドのおっちゃん「いやー、人間の場合はなんとも」
ソニ「スヨンはそお簡単には死なんやろ。人の魂吸い込んでまで長生きするで」
ユナ「妖怪か!」


ガイドのおっちゃん「ほな先に進みまひょか」
ユナ「えー? このポンコツはどないすんの? まだ充電中やで」
ソニ「自分担いだらええやないか。怪力やねんから」
ユナ「マジで? 人使い荒いなぁ」


ナレーション:てな訳で、一行は岬の突端を目指し再び歩き始めました。


ソニ「(はぁはぁ)眺めはええけど、道がウネウネしてる上にアップダウンばかりでしんどいのぉ」
ユナ「(ひーひー)贅沢ゆうな。そっちは手ぶらやないか。ウチなんかからくり人形引きずっとるんやど」
ソニ「引きずるなや。『ID4』のウィル・スミスか。服が傷むよって、横着せんと担いで歩かんかい」
ガイドのおっちゃん「ほぉ、なかなか厳しゅうおますな」
ソニ「馬の世界ではどおか知りまへんけど、我が国では年上のゆうことは絶対なんですのよ(おっほっほ)」
ガイドのおっちゃん「ここの馬は実力至上主義ですわ。牡馬一頭につき牝馬数頭の割合でハーレムを作って生活してるんやけど、牡と牝の割合はだいたい同じくらいなんで、牡馬がだいぶあぶれることになりますわな。てことは自分の子孫を残したい牡は実力で牝を奪うしかない。群れの中心である牡を倒すしかない訳です。種付けのシーズンになるとあちこちで牡同士の喧嘩が始まりまっせ」
ソニ「種付けのシーズンて?」
ガイドのおっちゃん「春から夏にかけてですな。つまり今時分ですわ。耳が三角に尖って後ろにピターって寝てるのは盛りのついた牡馬やさかい近づいたらあきまへんで。気が荒うなってますさかいな」
ソニ「大丈夫ですわ。ウチら盛りがついた男アイドルの中で10年以上過ごしてきましたよって、そお簡単にはやられまへんて」
ユナ「よーし!(ぽい)」
がしゃーん
ソニ「放り投げるなって。会社の財産やど」
ユナ「こんなアホ重い人形、いつまでも引きずって歩けへんわ。こうなったら年上もクソもない。馬の世界に倣って実力勝負じゃ。相撲で負けた方がチュヒョン(アイリーン)を担ぐことにしようで」
ソニ「いやや、『イッテQ』の温泉同好会やあるまいし」
ユナ「へへーん。勝つ自信がないんやな。やーい、ちびっ子! フィジカル弱者のちんちくりん」
ソニ「なんやと、こら。貴様なんぞ、ウチの必殺技ねじれ玉で一撃じゃい」
ユナ「ねじれ玉?」
ソニ「歌でもダンスでも容姿でも突出したところのない味噌っかすアイドルの力を集めて放つエネルギー弾や。ヘリムよ、ニコルよ、リセムよ、オラにその屈折した思いを貸してくれ!」
ユナ「よしなさいよ。いろいろ怒られるって(呆)」
アイリーン「(むくっ)事情は理解しました」
ガイドのおっちゃん「あ、起きた」
アイリーン「そやけど、もうこれ以上ウチのために争うのはやめてください。ウチ、見ててつらい」
ユナ「アホか! 貴様がポンコツやからこおゆうことになるんや!(げしげし)」
アイリーン「ひえー、ロボット虐待や〜」
ソニ「会社の備品やけど、今だけは許す」


てくてく…てくてく…
ソニ「む、なにか建物が見えてきたで」
ユナ「えらいくすんだビルやな。まるで映画のセットか廃墟みたいな」
ガイドのおっちゃん「廃墟ですねん」
ユナ「は?」
ガイドのおっちゃん「著作権の関係上画像は載っけられへんのやけど、あれは都井岬グランドホテルゆいます。数十年前はえらい栄えたホテルやったんやけど、2000年に廃業しましてん。一時はおたくらの国の企業が買い取って再建に乗り出すゆう話もあったけど、結局宙ぶらりんのまま。もお20年近く野ざらしになっております」
ソニ「かつて宮崎が観光立県やったちゅう話は聞きましたで」
ガイドのおっちゃん「そないだす。あの頃は良かった。都井岬にも年間70万人近い観光客がおいでなさってなぁ。大きなホテルがいくつも建っておった。今じゃ小規模な国民宿舎と個人経営の民宿が2軒残っておるだけですわ」
ソニ「大きなホテルは全部潰れちゃったんでっか?」
ガイドのおっちゃん「へえ。この辺りには他にも都井岬観光ホテル、都井岬磯ホテル、都井岬荘などの廃墟が点在しております」
ユナ「観光地にそんなに廃墟あっちゃ景観を損なうやないの」
ガイドのおっちゃん「そやけど、撤去するにもどこも費用を出したがらないもんで。牧組合や農水省の仕事は天然記念物たる御崎馬の維持管理。観光事業にはノータッチでおます」
ソニ「うーむ。ブームが過ぎた観光地の闇を見た思いやな」
ユナ「いずれジュ○スにいさんのトス○ーナホテルもこんな姿に…」
ソニ「不吉な連想すんなよ」
ユナ「いやー、あっちの立地も馬が関係するからつい(笑)」
アイリーン「それやったらこの廃墟を観光資源として活かしたらどないでっか?」
ユナ「どおやって? グラビアモデルの水着撮影でもさせる気か?」
アイリーン「今時廃墟で撮影するグラドルはおらんでしょう。今月の少女のMVは廃墟好きでっけど。そおやなくて心霊スポットとして売るんですわ。波の音が聞こえる高台に打ち棄てられた巨大ホテル群。肝試しに最高やないでっか」
ソニ「あ、ウチ怖いの大好き。廃病院とか古いトンネルとか夜中に廻ってみたいわぁ」
アイリーン「ね?」
ユナ「なるほど」
ガイドのおっちゃん「いや、実際ここの廃墟には出るんですわ」
ソニ「マ、マジで?(喜)」
ガイドのおっちゃん「へえ。夜中に巡回しとる組合員が何人も証言しとるんですが、月のない暗い夜に廃墟の庭先をうごめく影が…。丁度子どもくらいの背丈で、後ろ髪の長い姿なんやそおです。その影がひとつやなしに時にはいくつも、どこからともなく漂ってきてはこの辺をふらふらと…」
ユナ「ごくっ」
ガイドのおっちゃん「それと共にバリバリ、ブチッブチッと、髪の毛を引き毟る様な異様な音が。そして闇をつんざく甲高い悲鳴!」
ユナ「ひぃぃ」
ガイドのおっちゃん「『だ、誰や!』 ひとりの組合員が勇気を出して懐中電灯を向けると、そこには庭の草をむさぼり食う御崎馬の姿が。『ヒヒィーン!』」
ソニ「(かくん)心霊スポットやなく、馬の餌場やないかいっ!」






※『マンプラス計画』はサイボーグの話じゃないの? とか言う突っ込みはなしでお願いします(笑)


都井岬の廃ホテルに関してはこちらが詳しいです
 廃墟検索地図 都井岬廃ホテル