関西ソニョシデ学園

過去に生きるK-Popのブログ

第437話 そに散歩 〜ロサンゼルス篇〜 (後編)

    
ナレーション:『そに散歩』のロサンゼルス編もいよいよ最終回。どんな結末が待っているのでしょう。




     ロス市の形は異常に複雑


05:コリアンタウン(承前)
てくてく
テヨン「難しい話してたら腹減ったな。メシ食うか?」
ソニ「なに、その唐突な展開」
ティパニ「まさか、あれとちゃうやろな?」
ナレーション:つーことで、3人は食堂を探し始めたみたいっすよ
ティパニ「ああ、やっぱりナレーションが音声合成くさくなってる」
テヨン「そんなことはええから、さっさとメシ屋を探せや」
オールドマン「なんなら俺の店で食うか? ごちそうしてやるぜ」
ソニ「おじいはん、食堂経営してたん?」
オールドマン「そうなんだ。サウスセントラルでチリ料理の店をやってる」
ティパニ「そやったそやった。おじいはんの店はなかなかイケるで」
テヨン「よし、そんならそこにしよ」
ナレーション:ちょっと歩くけど、サウスセントラルに行ってみるみたいですよ
ソニ「やっぱり別の番組になってるやんけ」


06:サウスセントラル
    
ナレーション:コリアタウンから南へ数キロ。
  一行はサウスセントラルつー街にやって来たんですよ。
オールドマン「ここが俺の店だ。遠慮なく入りな」
テヨン「もう入ってるがな」
オールドマン「(ずこっ)韓国人てのは遠慮がない人種だな」
ティパニ「こいつらが特別なんや」
ソニ「それにしても心斎橋のアメリカ食堂そっくりやな」
オールドマン「さぁ何でも食ってくれ。チリっていうとバロス・ルコやチュレタ・デ・セルドが有名だが、うちでは珍しいアルパカやリャマの乾し肉もあるぞ」
ソニ「は?」
テヨン「チリ料理って、そっちのチリやったんかい?」
ナレーション:それでもお腹がすいていたのか、チリコンカルネならぬ本場チリ料理を大量発注です。
テロップ:大竹→バロス・ルコ、アルパカ肉の塩焼き
     狩野→チュレタ・デ・セルド、カスエラ
     三村→パステル・デ・チョクロ、リャマ肉の塩焼き
ティパニ「ウチらの名前と違う!」
テヨン「(もぐもぐ)それはともかく、アルパカって美味いね」
ソニ「うむ。ペルーの方ではモルモットも食うらしい」
テヨン「あー、むかし宮地眞理子が食ってたような」
ソニ「…(もぐもぐ)」
テヨン「…(むしゃむしゃ)」
オールドマン「…(にこにこ)」
ティパニ「…!!」←気づいた
ソニ「…(もぐもぐ)」
テヨン「…(むしゃむしゃ)」
オールドマン「…(にこにこ)」
ティパニ「…!!(きょろきょろ)」
ソニ「…(もぐもぐ)」
テヨン「…(むしゃむしゃ)」
オールドマン「…(にこにこ)」
ティパニ「しゃべれよ!」
一同「わははは(大喜び)」
ナレーション:と、お腹がいっぱいになったところで、再び散歩するみたいですよ


    
てくてく
ソニ「落書きだらけやなぁ」
テヨン「お、おもちゃ屋がある」
ソニ「入ってみるか」
ティパニ「いよいよ本格的に『モヤさま』やな」
からんころーん
テヨン「たのもお! …わっ、なんじゃこりゃ?」
ソニ「透明な壁や」
ナレーション:売り場とレジカウンターの間を、厚さ3センチはあるガラス板が仕切ってるおもちゃ屋さんです
テヨン「モヤモヤするわー」
ティパニ「防弾ガラスや。ロス暴動の後、こうやって防犯に努める店が増えたんやって」
オールドマン「ここの店主はコリアンの2世だが、営業中はいくら呼んでも絶対こちら側に出て来ないんだ」
店主「怪我したくないからね」
テヨン「そんじゃあ万引きされ放題やないか」
店主「やってみなよ。うちからは何一つ持ち出せないよ」
テヨン「ふふふ、全州中の駄菓子屋をくすね歩いたこのキム・テヨンさまをなめるなよ」
ソニ「そんなことテレビでしゃべるなって」
テヨン「とりあえずこのお化け金太とキジ車をポケットに…(さささ)、そして素知らぬ顔して店を出る(ぴーぴー)」
店主「(ぽち)」←ボタン
ががーっ、がしゃーーーん!
テヨン「わぁ、入り口に鉄格子が!」
ソニ「…閉じ込められた(唖然)」
店主「けけけ、このスイッチと警察のアラームは連動している。こうやって身動き出来ないうちに、すぐお巡りが飛んで来る仕組みさ」
テヨン「なーるほど、よく出来てる」
店主「こうでもしないと俺たちマイノリティは生きていけないいからな」
ソニ「ふーん。他国で生きるってホンマ大変なんやね」
ファンファンファン…
ティパニ「あ、マジで警察が来た」
ソニ「なぬ?」
店主「お、こりゃ失敬。連動スイッチを切るの忘れてた。わっはっは」
テヨン「笑い事ですむか!」
ナレーション:スイッチ一つで密室になるおもちゃ屋おやっさん、ありがとうございました


ナレーション:3人は警察にたっぷり絞られたようですよ
てくてく
テヨン「そやけど、おやっさんからお詫びに、お化け金太とキジ車もらうたからええか(にこにこ)」
ティパニ「なんに使うねん、そんな郷土玩具(呆)」
ソニ「ロスでのコリアンが苦労してるのはわかった。そやけどニューヨークとかはどうなんやろ?」
テヨン「ステラ・キムみたいなポーっとした奴が出てくるくらいだから、平和なんちゃう?」
ティパニ「奴が特殊なんじゃねーの?」
オールドマン「さぁどうだろう。しかし、92年の暴動ですっかりロスのイメージが悪くなっちまったけど、黒人とコリアンの摩擦は東海岸の方が多いんだぜ」
ソニ「え、そうなん?」
オールドマン「1970〜80年代にかけては、ニューヨーク、ワシントン、シカゴなどで、人種暴動が起きている。
  そんな中でコリアンは成功した移民とみられているから、余計摩擦が大きくなる。ブルックリンなどでは何度も糾弾事件が繰り返された。
  黒人ラッパー、アイスキューブの『ブラックコリアン』が大ヒットしたのも、反韓感情の表れだろう。
  この歌には黒人の本音が表れている」
     Ice Cube『Black Korea』
ティパニ「かっこええなぁ(のりのり)」
ソニ「あかん、こいつに韓国人ゆう自覚はない」
ナレーション:重くなるので、詳しくは下の脚注を読んでもらうとして



07:ガーデングローブ市
ナレーション:3人はじいさんと別れ、クルマで小一時間ほどの街にやって来たみたいですよ
ソニ「こぎれいな街やな」
ティパニ「ここはロサンゼルス郡(カウンティ)の東にあるオレンジ郡。ディズニーランドのあるアナハイム市で有名やな」
テヨン「あのガンダムが作られてるという?」
ソニ「マンネがおらん時くらい、その手の話題はやめようや」
ティパニ「そのアナハイムの南にあるのが閑静な住宅街ガーデングローブ市、つまりここやね。この街にもコリアンタウンがあるんや」
テヨン「へー、それは初耳」
ティパニ「ここは80年代頃から成長してきたところで、おそらく一番平和的に成功しとるコリアン居住地や。
  今ではニューヨークと同じくらいコリアンの人口がある。
  かつては死んだような街やったけど、コリアンが移住してきたおかげで生き返ったと言われてる。
  そこで市では予算を組んで再開発計画を立て、コリアンと協力して街を活性化させて来たんや。
  行政や地域住民とも信頼関係を築いているから、ロス暴動の時にも何の問題も起きへんかった」
ソニ「おー、それはすばらしい」
ナレーション:3人は韓国人商店街を歩いてみるみたいっすよ
てくてく
ソニ「ロスに比べるとずいぶんすっきりした上品な街やな」
テヨン「なんか通りを行く人もみな賢そうや。ロスはアホ面ばっかりやったからな」
ソニ「こらこら」
ティパニ「ハングルの看板や韓国風の建物が、上手く溶け込んでるやろ?」
ソニ「そうやね」
ティパニ「この街では、コリアンの文化を知ってもらおうと、30年くらい前からお祭りをやってるねん」
ソニ「お祭り?」
ティパニ「『韓人祝祭』ゆうてな。10月の1週間くらいの期間にボウリング大会や将棋大会なんかがあって、週末の2日間がステージを使ったメインイベントや。
  両国の国歌斉唱、市長や韓国人協会のお偉いさんの挨拶、人々はみな韓国語と英語を取り混ぜてしゃべり、夜空には盛大な花火が上がる。
  韓国からテ・ジナのおっさんとか呼んでの歌謡ショーはあるわ、民族楽器の演奏会はあるわ、それは賑やかなお祭りやねん」
ソニ「へー」
ティパニ「今から10年前、この祭りのカラオケ大会で、ウチが気持ちよく歌ってたら、怪しい黒服の男が近寄ってきて…」
テヨン「犯されたんか?」
ティパニ「いや、スカウトされた。SMの人やった」
テヨン「(かくん)なんや、つまらん」
ソニ「それにしても、よおそんな怪しげな誘いに乗って言葉もわからんのに渡韓して来たな」
ティパニ「だってどうしても歌手になりたかったんだもん。
  それにいっつも姉キと比較されるのもいややったし、自分の力を証明したかったんや」
テヨン「まぁ幸い同室にウチがおったから、ウチの才能の照り返しを受けてなんとかプロになれたけど、そうやなかったら今頃上海で立ちんぼやってるところやで」
ティパニ「(むか)いろいろ突っ込みどころ満載やけど、ここは故郷やさかい、我慢しといてやろう」
ソニ「ん、ここが故郷やて?」
ティパニ「そうや。ウチの実家はガーデングローブにあるんやもん」
ソニ「じゃあ、自分がロス出身ゆうのは嘘やったんか? 経歴詐称や!」
ティパニ「違う!」
テヨン「てことは、いつぞやの年齢詐称事件もあながち嘘やないかも…」(第150話参照)
ティパニ「何でそうなるねん。ロサンゼルス周辺の5郡をまとめてロサンゼルス大都市圏ゆうんや。広い意味でここもロサンゼルスなんやって」
ソニ「そんなんが通用するか! 全州出身者が”ウチも韓国人です”ゆうようなもんやぞ」
テヨン「なんやと、ケンカ売ってんのか? 全州こそ韓国の中心やっての」
ソニ「百済は韓国じゃありませーん」
テヨン「うきーっ、差別すんな!」
どったんばったん
ナレーション:結局、人種差別はなくならないってオチなんすかねえ
  とにかく、撮れ高は充分つーことで


08:ロングビーチ
ナレーション:ロングビーチの海岸でお茶なんかするみたいですよ
    
ティパニ「ここがかの有名なロングビーチや」
ソニ「あの芸能人の聖地と言われた?」
ティパニ「それは大磯のロングビーチ
テヨン「オゲンキデスカ〜! ワタシハゲンキデス〜!」
ティパニ「ええから!広いところ出ると、必ずこう叫ぶ奴おるよなぁ」
テヨン「てへへ、根っから韓国人なもんで」
ソニ「全州人は韓国人ちゃう」
テヨン「まだ言うか、この黄色いWASPめ」
ティパニ「まぁまぁ。それよりロスの散歩、どうやった?」
ソニ「まぁいろいろ考えさせられたかな」
テヨン「なんか深刻になっちゃって、つまんなかったっす」
ティパニ「まぁそうゆう場所と歴史やからな」
テヨン「そやけど、我々が世界に進出していくためには、そんなもこんなも乗り越えて、前向きに生きて行かなくてはと思いました」
ティパニ「そうや。憎悪は憎悪しか生まん。負のループや。
  それより相手を理解し、差を認め、互いの個性を尊敬しあって生きていくべきや」
テヨン「そうね。今度からKARAや2NE1とも仲良くしよう」
ソニ「うむ。APinkやGirl’s Dayの面倒も見てやろう」
ティパニ「そうそう。そんでJYJにいさんとも…」
ソニ「それだけは認められません!(きっぱり)」
ティパニ「(かくん)とほほ。それではロスの街からさようならー!」
ソニ/テヨン「バイバイキーン!」







※アイスキューブ『ブラックコリアン』…ロス暴動直前の91年に150万枚以上の大ヒットとなった。
 【歌詞和訳】(野村進氏の翻訳を参考にしました)
  酒が欲しいから買いに行くだろ?
  そうするとオリエンタル連中が小銭を数えやがる
  もうニガーはうんざりしてんだよ
  人を見りゃ万引き扱いしやがって
  誰のおかげで店が出せてるんだよ、この野郎
  ヘイ! お前だよ!お前だ。そこの細目の野郎
  なに見てんだよ、万引きなんかしてねえよ
  さっさと勘定しやがれ、いつまでも付け回してんじゃねえ!
  ちっこいケツに一発ブチ込んでやろうか?
  アメリカ中のお前らの店、全部シカトしてもいいんだぜ
  俺が声をかけりゃみんなノルさ、決まってる
  だからブラックの拳をなめてんじゃねえよ
  火をつけてやろうか?ぶっ壊してやろうか?
  ここがどこだかわかってんのかよ?
  ゲットーをブラックコリアにはできないぜ


 という歌詞からもわかるように、ロスでもニューヨークでも、在米コリアンは往々にして黒人やヒスパニックを下に見がちであるようだ。
 また、そこでの生活より一旗揚げることが大事で、儲かったら母国に帰りたがる。
 個人や家族に帰結するところがあり、民族としての結束は薄い。当然他民族との交流は少ない。
 などで、ネガティブな評価を得ている部分も多い。
 コリアン側からは「自分らが街を活性化させているのに」「チャリティも充分やっているのに」などの意見がある。


※ニューヨークの韓国系移民は現在およそ14万人。
 もともと自営率の高い在米コリアンの中でも飛び抜けていて、半数以上が自営業である。
 一方では「模範マイノリティ」とされ、ディンキンスNY市長に
 「韓国人コミュニティはNY市で最も成長しているマイノリティの一つであり、韓国人はアメリカンドリームを実現する手本だ」(韓国日報)とまで言わしめたが、
 また一方では黒人による不買運動糾弾事件が繰り返され、韓・黒摩擦は依然深刻である。
 今年(2013年)になっても3月にブルックリンで警察の発砲で死亡した10代黒人青少年に対する夜間追悼集会が暴力デモに発展し、
 近隣の韓国人商店に対する大規模略奪行為に及ぶなどの事件が起こっている。
 マイノリティ同士のもめ事はなかなかなくならないが、その原因を単純にWASPに求めるのではなく、やはり社会構造の歪みととらえるべきだろう。


※実は韓人祭りはコリアンコミュニティの多くで開催されていて、ティファニーがスカウトされたのがこの『韓人祝祭』かどうかはわからない。
 が、祭りの雰囲気や時期が、これまでに知られているティファニーのスカウト状況と矛盾しなかったので、そういうことにした。
 最近になってティファニーが当時書いていたブログに綴った文章が公開されていて、当時の彼女の心境を知ることが出来る。
    
 親の反対を押し切っての単身渡韓なので、相当な覚悟であると同時に、不安を抱えていたことがわかる。
 なにしろまだ中学を出たばかりで、言葉もよくわからないのだ。
 が、家庭内での窮屈さや気持ちのすれ違いなど思春期の少女らしい悩みも抱えていたようで、それから脱却する手段でもあったようだ。
 ところで、在米コリアンの2世3世には母国語が出来ない者が多い。
 これは家以外では韓国語を使う場がないこと、親が忙しくて子供と接する時間が少ないこと、日本のように母国文化を教える朝鮮人学校などがあまりないこと、があげられる。
 デビュー当時のティファニーがまだ片言だったのはよく知られていることである。