関西ソニョシデ学園

過去に生きるK-Popのブログ

第318話 香煎粉(はったい)の夏

出演
 西独逸堂:キム・テヨン
 心霊探偵:キム・ヒョヨン
 牝鹿刑事:イム・ユナ
 カストリ作家:クォン・ユリ
 その他:少女時代


ユリ「ねえ、西独逸堂。人は20ヶ月もミシッカルを飲まずにいられるのものだろうか?」
テヨン「また謎か? それとも怪奇かね?」
ユリ「不思議じゃないか。この国の女子は、夏になるとみんなミシッカルをミキサーで混ぜて飲む。それやのに、今年、この宿所じゃ誰もミシッカルを飲んでへんのや」
テヨン「この世には不思議なことなど何もないのだよ、クォンくん」
ユリ「そうかな? これを見てや(ぴら)」
テヨン「ん、見たことのある袋やな」
ユリ「ウチらが好きなミシッカルの袋や。香煎粉(こうせんこ)て書いてあるやろ?」
テヨン「それは”はったいこ”と読むのだよ、クォンくん。…しかし”はったい”には”糗”の文字を当てるのが普通やが、”香煎”とは珍しい」
ユリ「ここの台所で見つかった最後のミシッカルの袋やねん。このメーカーは去年の春に袋のデザインを変えて、文字も”糗”に変えとるのに、この宿所にはそれ以前の袋しかない。
  それに去年の正月にミキサーが壊れたまま、誰も新しいミキサーを買おうとしていない。
  つまり今年どころか、間違いなく去年から、この宿所ではミシッカルが飲まれてないゆうことや。こんな不思議なことがあるやろうか?」
テヨン「不思議でも何でもありゃしない」
ユリ「じゃあ自分には真相が見えてるのかい、西独逸堂?」
テヨン「まあね。そやけど、ミシッカルに興味ないし、そんなことに関わるのはごめんや。
  気になるなら、ヒョさんでも訪ねてみたらどうだい?」
ユリ「ヒョさん…心霊探偵のキム・ヒョヨンかぁ」


ヒョヨン「帰れ帰れ!」
ユリ「わざわざ同期が訪ねて来たのに、そんな言い方はないやろう?」
ヒョヨン「なにがわざわざや。自分の部屋は隣やないか」
ユリ「それかてわざわざや。とにかく相談に乗ってくれよぉ。
  自分、他人さまの記憶が見えるんやろう?」
ヒョヨン「見えるで。事件に関係ないことなら何でも見える」
ユリ「(ずこ)あかんやん」
ヒョヨン「そやかていきなり事件の真相が見えたら、推理劇として盛り上がらんやろ」
ユリ「役立たずやなぁ」
ヒョヨン「いきなり来て失礼な奴やな。人の記憶なんて見ぃへんでも、事件の真相ぐらいわかるわい」
ユリ「なんやってぇ? ほな20ヶ月もミシッカルが飲まれてない謎が解けたゆうんか?」
ヒョヨン「ああ。事件はとっくに終わってる。帰れ帰れ!(どげし)」
ユリ「わー(ゴロゴロ)、教えてくれよー」


ソニ「それで、ヒョさんのところを追い出されてきたと?」
ユリ「そうなんよ。ヒョヨンもテヨンもなんか判ってるみたいなんやけど、ウチにはさっぱり」
ソニ「ユリさん、頭悪いからなぁ」
ユリ「なんやとー(がおー!)」
ソニ「とにかくこの宿所で1年以上もミシッカルが飲まれていないってのはおかしいね。
  だって去年の夏、ウチ大量にミシッカル買うて来たもの」
ユリ「な、なんやてぇ?」


ユリ「き、消えたんや、鍵のかかった密室から」
ユナ「はぁ? ミシッカルが消えた? そんなアホな」
ユリ「だってソニは去年の夏大量にミシッカル買うたゆうてるし」
ティパニ「今年の夏はウチがぎょうさん買うたで」
ユリ「マジか?(ぴゃー) そやけどそのミシッカルは何処に消えた? 台所には見当たらんぞ」
ユナ「どうでもええけど、台所は密室でもなきゃ鍵がかかってもおらんで。むしろその逆」
ユリ「みんなから常に見られてる場所ってことは、犯罪不可能とゆう意味で密室と同じや」
ユナ「強引すぎる理屈やなぁ。とにかく、いま台所はどうなってるんや?」
ティパニ「さぁ、ジェシカが呪いのデザートを作るためにメチャメチャにしてから近づいてへんし。いろいろ忙しくて自炊する間もなかったからなぁ」 ※第276話参照
ユリ「だからミキサーは壊れたまま、ミシッカルはイッコもなしやって」
ユナ「よし、確認してみようで(すっく)」
ユリ「わざわざ見に行かなくたってウチがそうゆうてるんやからそうやの。信用しろや」
ユナ「別に自分を疑っとる訳やないけど、こうなったら確かめんと気がすまん」
ティパニ「そやな(すっく)」
ユリ「わー、そっち行くと呪われるでー(ぶるぶる)」


テヨン「クォン・ユリは生来の気の弱さに加え、ドラマに出ても個人人気が一向に上がらないという現実を突きつけられて、最近少々鬱になっているようや」
ヒョヨン「ミシッカルが消えたなどと騒いでいるのはそのせいやと?」
テヨン「違うかね? 人間の脳は眼で見た物を自分の都合のいいように変えてしまうことがある。
  ヒョさんだって判ってるんやろう?」
ヒョヨン「まぁね」


ティパニ「おー、久しぶりに台所に来たなぁ。同じ宿所の一角やのに何故か避けてしまうな」
ユナ「なんや、結構きれいに片付いてるやないか」
ティパニ「うむ。ジェシカが荒らした痕は綺麗さっぱりなのうなってるみたいや」
ユナ「ほんで、ミシッカルの袋はいつも何処においてあったんやっけ?」
ユリ「(びくびく)そ、それはこっちの壁際にまとめて…ああっ!?」
ティパニ/ユナ「うわーっ、こ、これは!?」


ヒョヨン「この辺りでそろそろ真相を教えないと、ユリの奴ホンマにミシッカルにとりつかれてしまうで」
テヨン「あー、そうかもな」
ヒョヨン「こうなったらもお探偵や刑事の出番やない。頼むで拝み屋」
テヨン「は? なんでウチが教えなあかんねん」
ヒョヨン「それは自分がリーダーやからや」
テヨン「とほほ…」


ユナ「これは…ビタ500!?」
ティパニ「大量のビタ500が壁一面に!?」
ソニ「そんな腰抜かすようなことやないやろ。スポンサーが送って来るありがたい生活物資や。
  以前ピングレのCFやってたときは大量のバナナウユがあったやん」
ユナ「そおゆうたらそやね」
ちゃりーん
ユリ「はっ?」
ちゃりーん
テヨン「(すすす)この宿所に巣くっている妖怪”香煎粉(はったい)”を退治しに来たで」
ソニ「は? 何ゆうてるの? それにその格好は?」
ヒョヨン「西独逸堂は3つの顔を持ってる。めがね屋、アイドル歌手、陰陽師や」
ユリ「お、おんみょうじー?」
テヨン「(ぶつぶつ)青龍、白虎、朱雀、玄武、空陳、南寿、北斗、三体、玉女…急々如律令!!(てぇーい!)」
ばしゃーん! バリバリバリーーーーー!
ティパニ「わー、ビタ500の積み荷が崩れたー」
ピカーッ!
ユナ「ああっ、その向こうには大量のミシッカルの袋が?」
ユリ「そ、そんなアホなぁ!」
テヨン「幽霊の正体見たり枯れ尾花…これがミシッカル消失の真実だよ、クォンくん」


ユナ「つまり、ミシッカルの袋は最初から消えてなんかなかったと?」
テヨン「そう、ソニが去年買うて来た奴も、パニが今年買うて来た奴も、ずっとここに山積みにされていたんや」
ティパニ「ところがビタ500の陰で誰にも気付かれなかったんやな?」
テヨン「いいや、みんな知っていたさ。ただ小遣いに困ってへんのと忙しいのの両方で、今更ミシッカルを作って飲もうゆう気にならなかっただけや」
ソニ「言われてみれば、ミシッカル買うて来たのはええけど、喉渇いたらついスタバでドリンク調達してた気がする」
ティパニ「あー、ウチもや」
テヨン「結局、毎朝ここに来てミキサーを使い続けていたのはクォン・ユリただひとりやったんや」
ユナ「ええ? そやけどミシッカルがないって騒いだのはユリねえやで。毎日来てたんなら、これだけ大量の袋に気づかん訳ないやろ」
ヒョヨン「それが彼女には見えてなかったんや」
ユリ「だってなかったんやもん、このミシッカルは誰かがウチを陥れようと、さっき置いたに決まってる」
テヨン「喝ーっ!」
ユリ「ぴゃー、怖い」
テヨン「皆がミシッカルを飲まなくなった時期はいつ頃か、よく思い出してみぃ」
ヒョヨン「ユリは20ヶ月前、去年の正月明けゆうてたな」
テヨン「その時期、つまり2011年1月後半は、ビタ500が大型スポンサーについて、盛んにCFやキャンペーン動画を撮っていた時期や」
ユナ「そうか、思い出した。その頃はスポンサーへの配慮もあって、喉が渇いたらビタ500ばっかり飲んでたな」
テヨン「さよう。ところがクォン・ユリはミシッカルが大好物、健康にもいいので異常な愛着を持っていた。
  一方、生真面目で芸能人としてのサービス精神にも富んでいる彼女は、スポンサーであるビタ500への礼儀も忘れることが出来なかった」
ティパニ「ははぁー、嗜好と仕事の板挟みやな」
テヨン「思い悩んだあげく、彼女はミシッカルの袋を見ないようにした」
ソニ「見ないようにゆうても、毎朝ここに来てたらいやでも目につくやろ」
テヨン「脳内から消したのだよ、ソニくん。例え視界に入っても、クォン・ユリの脳はミシッカルの袋を認識しないようになったんや」
ティパニ「ま、まさか、そんな都合のいいことが…」
テヨン「迷宮を作り出すのは物理やない。常に人間の心や。
  人間の脳は眼で見た物を自分の都合のいいように変えてしまうことがあると、さっきヒョさんにゆうたばかりや」
ユナ「そのうちビタ500が大量に送られてきてミシッカルの前に壁を作り、ウチらはミシッカルのことなど忘れてしもうた、と」
ヒョヨン「そんなら、なんでユリは急にミシッカルが見えないなどと騒ぎ出したんや?」
テヨン「そこだよ、ヒョさん。クォン・ユリはウチのところに来て、ミシッカルの袋がないと言う他に、もう一つ重大な事実を告げていたんや」
ユナ「そ、それは…?」
ユリ「(ふらり)ミキサーが壊れてるのに、誰も買い換えようとしないんよ。あれはグループ共有の物やのに…みんなで金出し合うて買い換えんとあかんのにぃ(がっくり)」
ソニ「ミキサーやて?」
テヨン「これを見ろ!(ばっ)」
ヒョヨン「わー、ミシッカルの袋のさらに奥から壊れたミキサーが!」
テヨン「この台所で毎朝ミキサーを使い続けていたのはユリだけやった」
ティパニ「なるほど。例の山芋汁を作るためやな」
テヨン「うむ。ところが酷使しすぎて、今朝そのミキサーを壊してしもうたんや」
ソニ「買い直せばええやん。ミキサーぐらいいくらもせんやろう」
テヨン「ところがユリの中には、ミキサーは共有物、みんなで買う代物ゆう認識がある、それやのに、この20ヶ月ミキサーを使い続けていたのは自分だけ。壊したのも自分や。
  自己責任で買い直したがええのか、あくまで共有物としてみんなで買い直すか、ふたたび板挟みになったゆう訳や」
ヒョヨン「それでミシッカルの亡霊に取り憑かれたんか」
テヨン「ミシッカルを飲むためにミキサーが必要やと言えば、みんなで買い直せるからな」
ティパニ「なんて気の弱い奴や」
ユリ「そやけどみんなミシッカル好きやろ? 新しいミキサー買って、みんなで美味しいミシッカル飲もうや。ウチ作ったるさかい…(ふらふら)」
ソニ「ユ、ユリ…(泣)」
ユナ「なんてアホなねえさんや(涙)」
ティパニ「とにかく、ユリの治療法はわかった。これからみんなでヨドバシ行ってミキサー買おう」
ソニ「そやな、そうせんとユリが不憫すぎる」
ユリ「ホンマ?」
ヒョヨン「ホンマホンマ。なんでも自分の気に入ったミキサーを買うがええ」
ユリ「わーい(ぴょんぴょん)」
テヨン「これにて”香煎粉(はったい)”の除霊、完了や!(ちゃりーん)」


ユリ「あ、あのー、ついでにたこ焼き器も買うてええ?」
ヒョヨン「それはあかん」







※おまけ…
    


※ミシッカルに関しては第120話参照のこと