関西ソニョシデ学園

過去に生きるK-Popのブログ

第101話 めぞんソニョシデ

ユナ「あか〜ん、トランク全然閉まらへん(グイグイ)」
ヒョヨン「なんでもかんでも持って行こうとするからや。まだ秋なんやし、冬物は必要になってから取りに帰ればええ」
ユナ「ずーっと帰って来れへんかも知れんで。トンバンにいさんの例もあるし」
ソニ「そうなったらあっちで服買えばええやん。最新モード揃てるやろ」
ユナ「なにゆうてるの。東京の物価の高さは異常やで。あんなところで服1着買うたら、田舎の大家族がひと月は生きていけるわ」
ヒョヨン「大金稼いどるくせに相変らずせこいな」
ティパニ「ウチは真っ先に”リョウシュウショ・クダサイ”ゆう日本語憶えたで」
ソヒョン「(頷き)”アテナハ・ウエサマデ”」
ソニ「アイドルが切ない金勘定するなや」
ユナ「いやいや、大切なことや。アイドルも生活が第一」
ソニ「民主党か!」
テヨン「それはそうと東京での宿所見つかったんかいな? こないだクッキーマンが見つけて来たような物件はあかんで」
ユリ「いくら安いゆうても新幹線で1時間は遠いもんな」
テヨン「ホンマや。U字工事でさえ東京に住んどるゆうのに」
ソヒョン「せめて箱根方向なら第三新東京市に住んでると思い込めたんやけどなぁ」
ユナ「トンバンにいさんも最初は狭いとこ住んだゆうとったな。23区内なら良くて3人ずつ、最悪4人5人のふた部屋になるんちゃうか」
スヨンBoAねえさんの部屋に居候しとった時を思い出すなぁ。あの頃はふたりで4畳半の下宿に住んどったもんや」
ジェシカ「神田川かよ」
ソニ「部屋はちゃんと都内に見つかったそうやで。もっとも4LDKちゅう訳にはいかんかったようやけど」
スヨン「ほらな。全員で4畳半に押し込まれるんや」
テヨン「ワールドアパート? もしやウチら不法就労?」
ソニ「そんな訳あるか。マンションの空いてる部屋四つ抑えたゆうとった。階はバラバラになるけど、今まで通りふたり一部屋や」
ティパニ「えー? ウチは?」
ユリ「わーい、あぶれた、あぶれた」
ソヒョン「おねえは管理人室や。これからは響子さんと呼んでやろう。ゼッケンも0やし丁度ええ」
ティパニ「PiyoPiyo」
ジェシカ「するとそこの一の瀬のおばはんと賢太郎がまた同室てことやな」
テヨン「誰が宴会好きのおばはんじゃ!」
ソニ「ウチかて小学生ちゃうど!」
ヒョヨン「問題はそこや。せっかくの機会やのに同じ部屋割りでええんやろか?」
全員「(ぽん)なるほど!」
ジェシカ「はーい、ウチはテヨンと同室になりたいです」
ヒョヨン「なんで?」
ジェシカ「テヨンはマメに部屋を片付けます」
スヨン「(ムカ)部屋を散らかすのは自分かて同じやないけ。ウチひとりで汚しとるような言い方は納得いかへん」
ジェシカ「ウチは洋服を脱いだままにするだけや。自分みたいに食いもんのカスだらけにしたりせんわい」
スヨン「ムキーッ!」
テヨン「ウチかて好きで整理整頓しとる訳やない。他人の服までは面倒見いへんで」
ジェシカ「しゅーん」
ヒョヨン「ウチは逆にスヨンと一緒がええな」
テヨン「その心は?」
ヒョヨン「毎週スヨンのオカンが来てウチのも一緒に片づけてくれる」
ソニ「東京やっちゅうとんねん。ソウルと同じに考えるな」
ヒョヨン「スヨンのお姉でもええから来てくれへんかなぁ」
スヨン「(ぼそ)スジンが来たらもっと散らかってまうで」
ユナ「ウチは今まで通りで不満ないけどな」
ユリ「ウチも」
テヨン「さすが関西ソニョシデでは没個性的あつかいのご両人。当たり障りなくて結構結構」
ユンユナ「(むかっ)ふたりの生活サイクルが違うから、部屋を自由に使えてええんじゃ」
ソニ「まるで自動車工場の相部屋みたいな生活しとるもんなぁ」
ヒョヨン「だったらパニも入れて3交代制で生活すれば丁度ええんやない?」
ジェシカ「そやな、もともとパニは出稼ぎに来とるようなもんやし(笑)」
ティパニ「(むかむか)ほな日本での活動も3交代にしてくれるんやろうな!」
ソニ「ムキになるなよ」
テヨン「ウチはマンネとさえ別ならどこでもええで」
ソヒョン「なんでウチはいやなん?」
テヨン「自分、変な草を栽培するやろ」
ヒョヨン「あー、するする。ベランダに置ききれんで床の間にまではびこっとるわ」
ソヒョン「日本に行ったらマーシーが珍しい草の株手に入れてくれるんやて(うきうき)」
ヒョヨン「いい加減犯罪やゆう自覚持てや! それに草にかける肥やしで部屋中臭くなるんじゃ!」
テヨン「な? そうゆう小野二助みたいなヤカラとは一緒に住めへんわ」
ジェシカ「なら、今まで通りマンネはヒョヨンとやな」
ソヒョン「仕方ない。ヒョヨンねえは家事得意やから消去法でOKしたろ」
ヒョヨン「とほほ」
テヨン「となると…ウチはやっぱりソニでええわ。大抵イヤホンでゲームしとるから邪魔にならんし」
ソニ「ウチがイヤホンしとるのは自分がいつもでかい声で歌うとるからやないか」
テヨン「歌の練習はなにより大事や。いやなら他の誰かと暮らせ」
ソニ「うう………や、やっぱりココマと一緒でええよ(しゅん)」
ジェシカ「えー? てことはウチはスヨンとか?」
スヨン「ウチもスヨンとか?」
ジェシカ「スヨンゆうな」
ユナ「結局今までの部屋割りと一緒やんか(笑)」
ユリ「変えようもないやろ。割れ鍋に綴じ蓋やからな」
全員「まったくや。あははははは!」
ティパニ「……だから、ウチは?」







※ソウルの宿所の部屋割りは、テヨン・サニー/ジェシカ・スヨン/ユリ・ユナ/ヒョヨン・ソヒョン/ティファニーだったはず。
 ティファニーは唯一家族が韓国にいないので以前からメンバーもいろいろ気を使っているようだ。
 ひとり部屋をあてがったのもそうした気持ちの表れ。
 

 何かの番組でスヨンの母が「スヨンが部屋を汚しまくってジェシカに申し訳ない」と言い、時々掃除に出向いてると告白したことがある。
 そのジェシカも「今夜は疲れているからいいよね」と服を脱ぎ捨てたまま寝たことがあると、これはスヨンがチクッている。


 ユナはどうも深夜族らしく「ユナに無用の物は門限」とテヨンにバラされているし、
 夜中に寝ているユリを起こして「鶏の踵(のブーツ)を買って来たからこれを履いて踊ろう」と言い出し呆れられたことがある。
 ユリはソヒョン以上の健康志向で、決まった時間に寝起きし、決まったものを食べ、決まった運動をしている(らしい)。

 
 ソヒョンの生活態度については以前書いたとおり。変な草は育成していないと思う。
 


※自動車工場の相部屋…自動車工場で働く人々は正社員の他に、期間労働者不定期労働者(日雇いに近い)がいる。
 不定期労働者の多くが食い詰めて来ているので、給金の日払い週払い、住居の提供が必須の場合が多い。
 当然会社側としてもスキルの蓄積、円満な人間関係など期待できる訳もなく、使い捨て的な雇用となるのは致し方ない。
 そうした状況を描いた名作としてジャーナリスト鎌田慧の「自動車絶望工場」と言うルポがある。
 最近では河崎三行がホンダの工場に潜り込んで書いた「僕はホンダの工場労働者として働いた」と言うのもある。
 それによると、住み込みの自動車工場就労者は会社が借り上げた4.5〜6畳程度のアパートの一室に基本2名で生活している。
 が、24時間稼働のローテーションが異なるように配室されるので、同居人が働いている時間に寝られるようになっている。
 同居人が帰ってくる時間に外出すれば、上手くすると何日も顔をあわせず暮らせる。
 週末は自宅に帰る者も多いので、狭い部屋でも2〜3人が同居できるシステムになっている。
 ユリとユナの部屋はまるでそのようなものだ、と言うお話。
     自動車絶望物語(鎌田慧


    河崎三行の「僕はホンダの工場労働者として働いた」は単行本が出ていない。
    出るという話だったが、連載されていた「NAVI」も休刊してしまったし、今後出版される可能性は低いと思われる。
 

※小野二助…昭和初期の女流小説家尾崎翠の代表作「第七官界彷徨」の登場人物。
 この小説の中で、主人公小野町子が居候する東京郊外の一軒家には、
 分裂症を患う患者に片思いする長兄の心理医者一助、
 蘚の恋愛を研究している農学者で次兄の二助、
 ピアノを弾かず無駄話ばかりしている従兄弟の音楽受験生佐田三五郎が生活している。
 詩人を夢見て鳥取から出て来た町子は、小説を書くどころかこんな駄目男どもの世話をするのが精一杯の毎日である。
 そんな町子があるとき、ひとつの恋を経験したようなしないような…と言う物語。
 次兄の小野二助は、蘚の鉢を自室の床の間に並べ、夜通し煮た肥やしを与えている(熱い肥やしが蘚の恋愛に良いらしい)。
 町子が詩作に集中しようとすると必ず肥やしの臭いが家全体にたちこめ、堪らず音楽部屋に逃げ込み三五郎に慰めて貰うのが常である。 
 そうした中漠然と、こんな臭いの中に自分の求める第七官があるのかも知れないと夢を追い続ける、
 ちょっとアホの子町子の独白による物語はハマッたら一生抜け出すことの出来ない世界である。
 SF界におけるコードウェイナー・スミスに匹敵するほど、独自で魅了的な世界を作り出した作家だが、
 女性の自立が認められていなかった時代でもあり、活動期間は短く、認められたのもほぼ死後。 
 何度か映像化や舞台化もされているが、まだまだこれから評価されるべき作家だと思う。    
     尾崎翠(1896〜1971)    


     第七官界彷徨
    尾崎翠の作品は現在でも容易に手に入る