関西ソニョシデ学園

過去に生きるK-Popのブログ

第66話 たし まんなん いるぼにん

がちゃ
テヨン「(そー)スズキさん、おるの?」
チョンジュ「わん(ててて)」
スズキ「あ、テヨンさん(ごそごそ)」
テヨン「すんまへんな、クロークの中は狭いやろ。いつも残りモンで悪いけど、これ晩御飯な」
スズキ「こっちこそ、えらい迷惑かけてもうて」
テヨン「全然迷惑なんて思うとらんよ。それどころか、ウチ近頃宿所に帰ってくるのが楽しみで。このままずっとスズキさんと暮らせたら思うねん」
スズキ「テヨンさん…(うるうる)」
テヨン「ほら、ウチが食べさせたるわ。はい、あ〜ん」
スズキ「あ〜ん(幸せや。いっそ時が止まったらええ)」
テヨン「今夜はソニが田舎のロケで帰って来んゆうとったから、二人っきりで過ごせるで。トランプでもしよか?」
スズキ「なにもしたくない(ギュ)」
テヨン「あっ…」
スズキ「こうしているだけでええんや」
テヨン「ああ、スズキさん…(なんでこんなことになったんやろ。あれは確かチンチンの帰りに…)」


………
……


テヨン「お疲れしたぁ」
ぴゅううう
テヨン「さぶっ。また風邪ひいてまうがな。こりゃあ今夜はひげ八寄らんと真っ直ぐ帰るか」
声「(のそ)テ、テヨンさん…?」
テヨン「わ(な、なんや物陰から人が…。出待ちか、ストーカーか?)」
声「や、やっと逢えた…(ふらふら、ガクッ)」
テヨン「ん? こないだの日本人さんやないですか。えーと、サトーさん?」
スズキ「スズキです」
テヨン「ああ、そうでしたな。どないしたんです、こないなところで? スズキさん、確か牢屋…」
スズキ「酷い目にあいましたわ。今は保釈金を払って勾留を解かれてますけど」
テヨン「そうでしたか。(こいつなんで逮捕されたんやっけ? ああ、はめられたゆう話やったな)
  なんかえらい痩せたようやけど、大丈夫でっか?」
スズキ「テヨンさんの顔を見たら元気になりました。ほれ、この通り…あ(クラクラ)」
テヨン「ちょ、ちょっと! こんなとこで死んだらあかんで…」


テヨン「おっちゃん、熱燗おかわりな。ほれ、スズキさん、もっと飲んで。おでんも食って」
スズキ「大丈夫です、だいぶん暖まりました」
テヨン「うん、顔に赤味が差して来たわ(ニコ)」
スズキ「ホンマおおきに(その笑顔…一緒にこうしているだけで、ワシ全身が火照って来るわ)」
テヨン「なんかいろいろ大変だったみたいですなぁ。それにしても、またなんであんなところで半分行き倒れみたいに…」
スズキ「ははは、実はワシ、いま無一文なんですわ」
テヨン「オモナ!(ほんならここはウチの奢りかい? えらいヤツ拾うてもうたな)」
スズキ「社長の座は降ろされるわ、株価が下がったゆうて賠償金は払わされるわで、かなり資産がなくなっとったんです。
  先週保釈金5億円払うたら、ものの見事に一文無しになりましたわ(笑)」
テヨン「円…! 超大金やないですか? なんでそんな無理して拘置所から出てきたんです?」
スズキ「そやかて少女時代が単独コンサートやるゆう話やないですか。これを観んかったらペンの資格はありまへん。
  わし、拘置所の中からあの手この手で手配して、ようやくチケット手に入れたんですわ。
  それで矢も楯もたまらず保釈金積んで韓国に来たっちゅう訳です。そやけど、着いた時点でもう一銭も金が残ってなくて…。
  ここでおでん食うまで、機内で食うたしょぼい飯が最後の食事でした」
テヨン「いやーありがたいゆうかなんとゆうか…。こっちに来てどれぐらいになるんでっか?」
スズキ「3日前に着いて仁川から歩いて来ました。コンサートまでまだ日にちあるし、住み込みのバイトでもしよう思てましたけど、
  その前にテヨンさんにどうしてもひと言謝りたくて、昨日からMBCの前で粘ってました」
テヨン「謝る?(こいつウチになんかしたんか? ウチの裸想像してGeeしたくらいなら許すで)」
スズキ「テヨンさんのためにテレビ局を買おうとしたけど、力が足りなくてすみませんでした。
  これからもっと頑張って、いつかテレビ局買うて見せますさかい、堪忍してください」
テヨン「スズキさん…(こいつウチのために何百億も損したのに、恨み言ひとつゆわんと…。ちょっとは責任感じるなぁ)」


ムジ鳥「アサー!」
テヨン「ちょ、ちょっと、スズキさん。なにしとるんよ、こんな公園で?」
スズキ「あ、テヨンさん、おはよう。これから仕事でっか?」
犬「わん(ふりふり)」
テヨン「おはようやなくて。昨夜ホテル代貸したのに、宿に泊まらんかったの? その子犬はなん?」
スズキ「へえ、あれからホテル探して歩いとったら、この子にえらいなつかれまして。よおみたら怪我しとるし、病院に連れて行ったんですわ」
テヨン「人のいい。食うたらよかったのに」
スズキ「ははは。そうもいきませんやろ。犬連れじゃどこのホテルも泊めてくれへんから、この子とここで野宿したゆうわけです」
テヨン「凍死するで」
スズキ「大丈夫、一晩中走ってましたから。こうみえても学生の頃は長距離選手やったんですよ」
テヨン「はぁ…(こいつ実業家としては優秀なんかしれんけど、人間としてはアホやな)。わ、こら、なつくな」
犬「わん!(ぺろぺろ)」
スズキ「チョンジュもテヨンさんに感謝してますわ(笑)」
テヨン「チョンジュ?」
スズキ「こいつの名前です。ええ名前でっしゃろ?」
テヨン「ウチのふるさとですやん(食い辛くなる名前やな。それにしてもコンジュに比べてなんちゅうぶっさいくな犬や)。
  スズキさん、ウチとか犬のことはええから、もっと自分のこと考えんと長生き出来ませんで」
スズキ「みんなからそう言われるんですけど、あんまり欲もないし、自分のこと結構苦手なのかもしれません。
  会社も他人のため思うて働いてたらいつの間にか大きくなっとったし…。
  考えたら、自分の欲を出したのはテヨンさんの件だけかも。…あれがあかんかったんかなぁ(苦笑)」
テヨン「…」
スズキ「でも、そのおかげでこうやってテヨンさんと知り合いになれたし、全然後悔してまへんわ」
テヨン「困った人やなぁ(嘆息)。わかった、宿はウチがなんとかします。チンチン帰りに寄るから、それまでこの辺におってください」
スズキ「ええですて。住み込みのバイト探しますさかい」
テヨン「犬連れで住み込みなんか出来るわけないやろ。ウチに任せえな」


テヨン「(とはゆうたものの、さっぱりアテがない。…困った)」


ムジ鳥「ヨルー!」
がちゃ
テヨン「ここがウチとソニの部屋ですわ」
スズキ「うわー(感激)。可愛い部屋やぁ」
テヨン「(結局ここしか思いつかんやった。どうする? せめてソニにだけでも事情話して居させてもらうか? 
  いや、あかんあかん、あいつ小スマンやった。あいつが一番信用でけへん)」
スズキ「テヨンさん、ホンマにええんでっか? ワシのために困ったことになるなら正直にゆうてください」
テヨン「一文無しのクセに余計な心配せんでええ。コンサート終わるまで、みんなまともに宿所ですごす暇ないから大丈夫や。
  ただ、この部屋から一歩も出たらあかん。それからソニがおるときは息を潜めといてや。とくにチョンジュ、おまえは気ぃつけえよ」
チョンジュ「わん(頷き)」
テヨン「食事はなんとかウチがちょろまかして持ってきます」
スズキ「すんません。牢屋暮らしで狭いとこにじっとしとるのは得意ですわ。『オールドボーイ』の監禁生活みたいでドキドキするなぁ」
テヨン「(天下のテヨンさんがロクに知りもせん男を部屋に引っ張り込むとは…。自分でも驚くわ。
  やばいことしとるのはわかっとる。そやけど、なんか放っとかれへんねんな、この人。まぁ、なんとかあと10日、誤魔化し続けるしかないわ)」


ばびっと「こうしてスズキさんと紗南ちゃんの奇妙な同棲生活が始まったのでした」
テヨン「だれが紗南ちゃんや(ゲシッ)」