関西ソニョシデ学園

過去に生きるK-Popのブログ

ソニョシデ学園 14

そのニュースは、朝礼の時間にヨンミン教頭から告げられた。
ジェシカ・ジョンはアルバイトによる校則違反により退学となりました」
その瞬間、講堂中が悲鳴と怒号で沸騰した。
先生たちが静まらせようとしたけど、とても無理だった。
ボクは泣きも怒りもしなかった。あまりのことに声も出せず、ただ震えていたのだ。
クラスメイトのジェシカが朝から学校に来ていないことは知っていた。
体調が悪いのかと思って心配してたけど、まさか退学だなんて。
あんまりだ。酷すぎる。
朝礼は打ち切りになり、ボクたちは教室に戻された。
歩いて教室へ向かう途中、妙な囁きが切れ切れに耳に入ってきた。
「テヨンが」
「ヒョヨンも」
「バイトをやめろと」
噂しているのはクラスの女の子たちだった。
「どう言うこと?」
ボクは噂の中心に入って行って、女の子たちを問い詰めた。
女の子たちはおどおどと答えた。
その内容は衝撃的だった。
いつも一緒にいて仲良しだと思っていたクラス委員のテヨンを始め、幾人かの友人たちが、ジェシカがバイトしていることを学校側に密告したと言うのだ。
「みんな同じバイトしてたんだろ? なんだってジェシカのことだけ告げ口するのさ?」
ジェシカがバイト先で一番評判よくて時給がいいからよ。
 だからジェシカにバイト辞めろって迫ったけど、聞き入れないから密告を…。
 あの子たち、ジェシカに嫉妬したんだわ」
「なんてことだ」
「女の子同士に友情なんて存在しないのよ」
そう言いきるソネを睨みつけると、ボクは学園を抜け出してジェシカの家に駆けていった。
ジェシカー! ジェシカー!」
外から声をかけてもなんの返事もない。誰もいないようだ。
ジェシカは出て行ってしまったのだろうか?
もう二度と彼女に逢えない気がして、ボクは絶望に泣いた。
後から後から涙が湧いてきた。
ひとしきり泣いた後、ボクは無意識に今来た道を戻っていた。
もう彼女しかいない。
保健医のユリ先生に慰めて貰うために、ボクはトボトボと保健室を目指した。






ジェシカ脱退事件…2014年9月30日。
 この日は少女時代史及びK-Pop史にとって極めて重大な事件が起きた日として永遠に記憶されるだろう。
 ”Black September”あるいは”Black Tuesday”と呼ばれるかも知れない。
 ことの発端は、この日の早朝ウェイボーのジェシカのアカウントに「会社と他の8人から、今日から少女時代のメンバーではないと通知された」と書き込みがあったこと。
 あまりに唐突で、また少女時代は1枚岩と思われていたことから、俄には信じがたく、アカウントがハッキングされたのではないかとの噂が広がった。
 しかし数時間後、ファンミーティングのため中国に向かうメンバーの中にジェシカがいなかったこと、空港に現れたメンバーの表情がいずれも暗かったことなど、
 諸々の状況証拠からジェシカの書き込みは事実ではないかと言う意見が多くなってきた。
 結局午後になってSMEはジェシカの脱退が事実であることを認め、大きな衝撃が走った。
 SMEの主張は以下の通り。
 ”2014年の春にジェシカが個人的な事情で、今後1枚のアルバム活動を最後にチーム活動を中断すると知らせて来た。
 そこでそれを前提に、メンバーと共に良い着地点を見つけようと模索していたが、結論が出る前にジェシカが個人事業を始めてしまい、
 円滑なグループ活動が困難になった。そのため、予定を繰り上げて、少女時代を8人体制で行うことにした”
 つまりジェシカの都合により彼女を少女時代から外したよ、と。
 だが、ジェシカの主張はそれとは異なっていて、
 ”個人事業に関しては会社とよく相談したし、許可も貰っていた。なにより自分は少女時代の活動を最優先にしていた。
 にもかかわらずある時メンバーから、事業をとるか少女時代をとるか、はっきりしろと言われて困惑していた。
 そして今朝、なんの前触れもなく、少女時代からキックアウトされた”と言うのである。
 こうしたことに関連して、ジェシカの恋人で結婚の予定もあるとしつこく噂されている、コリアンアメリカンの事業家クォン・タイラー氏の存在があり、
 事実ジェシカの事業は彼のバックアップを受けていることは間違ないようだ。
 10月1日現在、ジェシカ事件に関しては大きく3つの観点から見ることが出来るようだ。
 ・少女時代サイド…ジェシカが個人事業を優先しているためにグループ活動の維持が困難になった
 ・ジェシカサイド…少女時代メンバーが、ジェシカの事業に嫉妬して(SMEを巻き込み)脱退を望んだ
 ・クォン氏暗躍説…いろいろと怪しいメンも多いクォン・タイラー氏がジェシカを騙して利用しようとしている。
  ジェシカの事業強行も氏のせいであって、ジェシカも少女時代もSMEも、その犠牲になっているのだ。
 勿論どれかが一方的に正しいと言う訳ではなく、それぞれの要素が複雑に絡み合っているのではないかと思う。
 現時点で(おそらく将来的にも)真実はこうだっだと言うことは難しいだろうし、一方の立場でヒステリックに主張する気もない。
 ただ確実なのは、もっとも心を痛めているのは世界中の少女時代ファンだと言うことだ。
 ジェシカやSMEではない。
 何故なら少女時代やSMEは、ファンに代表される顧客によって経済的に成立しているからで、
 お客をないがしろにしたことについて、今回言い逃れは出来ないだろう。
 ファンを軽視するこの国の文化産業はまだまだ未熟だと苦言をていさざるを得ない。
 T−araやKARA事件でさんざん見てきたような、あまりにもファンを無視したお家騒動が最大手のSMEでも起こるのなら、それは国全体の成熟度と見られても仕方がない。
 日本のジャニーズは赤西仁の退社の際に4年の歳月をかけ、情報を提供し、ファンの多くに退社は仕方ないと思わせてから(出来るだけ)円満に解決している。
 山程CDを買わせると非難されがちなAKB商法であっても、熱烈なファンをターゲットにしたもので、顧客満足度は案外高いのではないかと思われる。
 そういったファン目線に立った事業を行わない限り、上から目線でスキルを売るだけのアイドル商売は限界にきているとファンも含めて気づくべき時が来ているのかもしれない。