関西ソニョシデ学園

過去に生きるK-Popのブログ

第443話 夏への扉

六週間戦争のはじまる少しまえのひと冬、ぼくとぼくの牡猫、護民官ペトロニウスとは、コネチカット州のある古ぼけた農家に住んでいた。
この家は、なんと外に通ずるドアが十一もあったのである。
いや、ピートのドアも勘定に入れれば十二だ。ぼくは、いつもピートに、専用のドアをあてがってやることにしていたのだ。
コネチカットの冬が素晴らしいのは、もっぱらクリスマス・カードの絵の中だけだ。その冬が来るとピートは、きまって、まず自分用のドアを試み、ドアの外に白色の不愉快きわまる代物を見つけると、もう外へは出ようとせず、人間用のドアをあけてみせろと、ぼくにうるさくまつわりつく。
彼は、その人間用のドアの、少なくともどれか一つが、夏に通じているという固い信念を持っていたのである。これは、彼がこの欲求を起す都度、ぼくが十一ヵ所のドアを一つずつ彼について回って、彼が納得するまでドアをあけておき、さらに次のドアを試みるという巡礼の旅を続けなければならぬことを意味する。そして一つの失望の重なる事に、彼はぼくの天気管理の不手際さに咽喉を鳴らすのだった。
だが彼は、どんなにこれを繰り返そうと、夏への扉を探すのを、決して諦めようとはしなかった。
(ロバート・A・ハインライン著 福島正実訳 『夏への扉』より)


ジンジャー「(パタン)ふー、アホやな。その扉が2013年の夏につながっておってみぃ。この酷暑や。ぬくもるどころか、たちまち干涸らびてしまうど」
ハニー「ホンマやな。冬より夏が好きなんて、猫の気持ちはよおわからんで」
トゥプ「…すげー、にいさんたち、人間の本読んで難しい話してる。見習わなくちゃ」
プリンス「ま、いくら学んでも、食われちまったらそれまでやけどな(へっ)」






夏への扉アメリカSF界の巨匠ハインラインが1956年に発表した長編小説。
 以来半世紀以上にわたってオールタイムベストの地位に居座り続けている名作。
 タイムトラベルとロボットが主なガジェットとなっているが、現在の目で見れば、男に都合よいロリコン小説とも読め、猫好きには猫小説とも読める。
 なかなか麻薬的な魅力にあふれた小説だ。
 引用した福島訳版が有名だが(Wikiで加藤喬訳とあるのは福島と同人)、他に小尾芙佐による新訳版が2009年に出版された。
 福島訳が古くなったからだと思うが、小尾芙佐女史も昭和ひと桁の生まれなので、なんか微妙。


 あと、今回気づいたのだが、「ひと冬」住んでいたと言っているのに、「その冬が来ると」「きまって」と毎冬の行事のような書き方をしてあるのは矛盾だな。
 まぁ些細なことだけど。


※おまけ…
     『夏への扉』 難波弘之
    『センスオブワンダー』CD化されたんかぁ。まだ手に入るなら買っておかねば。
     ↑買いました^^ Amazonてなんでもあるなぁ