第258話 風の絵師
正祖「余は荘献世子の息子である」
←『華麗なる遺産』でおなじみ、ペ・スビンさん
ジェシカ「へへーっ」
正祖「余の御真(肖像)を描くがよい」
ジェシカ「イエー、陛下」
正祖「(コケッ)じ、自分、ホンマにシン・ユンボクやの?」
ジェシカ「そうでっけど」
正祖「ほんなら、一番得意な絵を描いてみて」
ジェシカ「あい」
※『風の絵師』…2008年にSBSで放送されたドラマ。主演パク・シニャン、ムン・グニョン。
李氏朝鮮後期、第22代王正祖の時代を背景に、朝鮮三大絵師(三園)と謳われたキム・ホンドとシン・ユンボクの愛と運命をミステリ仕立てで描いている。
キム・ホンドとシン・ユンボクは生年が13年違いと近く(もうひとりの大絵師チャン・スンオプの時代はこれより一世紀近くもくだる)、
どちらも図画署(王室の絵画機関)に属し、宮廷画とは遠い風俗画を好んで描いたことから、深い親交があったと思われる。
が、シン・ユンボクについては人物をあらわす資料がほとんど存在しないため、さまざまな憶測がある。
ここでは大胆にもユンボクを男装の女性絵師として描いている。
『風の絵師』の平均視聴率は12%台と大成功とはいかなかったが、これまでの時代劇の枠を打ち破ったパク・シニャンの演技やムン・グニョンの中性的な魅力などが高く評価されている。
ムン・グニョンはこの作品で2008年SBS演技大賞を受賞し、人気女優の仲間入りを果たした。
※正祖…李氏朝鮮第22代国王。
父である荘献世子が老論派の陰謀で無念の死をとげたことから、生涯を政界の改革に捧げた。
「余は荘献世子の息子である」は即位の際に言った言葉で、老論派の大臣たちへの宣戦布告。歴史的には名台詞である。
先王で祖父である英祖との問題、英祖の妃貞純王后との対立、腹心洪国栄の権力拡大など、さまざまなドラマがあり、
正祖を主人公とした大河ドラマ『イ・サン』が作られるなど、人気が高い。
キム・ミョンミン主演で2011年にヒットした映画『朝鮮名探偵 トリカブトの秘密』も正祖の世で、官僚の腐敗を描いている。
権謀術数が渦巻いた時代であり、なかなかミステリとの相性がいいようだ。