関西ソニョシデ学園

過去に生きるK-Popのブログ

第210話 恐怖の小さなお店

ぺったぺた、ぺたぺった…
ソヒョン「うふふ…、この試験管の底に澱をなした血液の感触、最高やわぁ。菱沼聖子やないけど、これを撹拌棒でぺたぺたするだけで時間がたつのを忘れるで」
ぺたっぺたぺた
むく〜
ソヒョン「ホンマはこんな豚の血やなくて、人間の血でやりたいなぁ。ああ、人間の血のペタペタ具合はどんなやろう。想像するだけで人を殺めたくなるわ」
ぱくぱく、ぱくぱく
ソヒョン「ん? なんかスヨンⅡが動いたような」
ぺたぺたぺた
ぱくぱくぱく
ソヒョン「間違いないわ。スヨンⅡはこの血液に反応しとる(ひゃー)」


♪ダドゥ(コーラス:PIGGY DOLLS)
ソヒョン「あれは9月23日のことやった。ウチはいつものように麻薬問屋街を歩いていた。
  とそこに突然の皆既日食! 馴染みの中国人の店に、それまで気づかなかったこのへんてこりんな植物が飾ってあった」
♪ドゥッドゥワ〜
ソヒョン「細い茎の先に口だけのでかい顔のような花。まるでスヨンねえみたいやった。
  その毒々しい気配が気に入ったウチは、すぐに中国人から花を買った。1950ウォン」
スヨンⅡ〜
ソヒョン「ウチはその花にスヨンⅡと名付けて、毎日水をやり上等の液体肥料もおごってやった。
  そやけど未知の植物だけに育て方がよお判らん。段々スヨンⅡは元気をなくしていった」
♪ウ、パドゥ
ソヒョン「それやのに、いま、豚の血に反応してぱくぱく欲しがっとる! なんて悪魔な植物や」
♪ぱくぱく、ぱくぱく
ソヒョン「この血が欲しいんか。この血を吸うたら大きゅうなるんかあぁぁぁぁ〜」


ぽた…ぽた…
ソヒョン「けけけ、美味いか、血やぞ。もっと吸え〜、もっと吸え〜」
ぶるぶるぶる
ソヒョン「おお、スヨンⅡが喜んで震えとる!」
スヨンⅡ「お、おえー(げろげろ)」
ソヒョン「わ、吐きおった。血が気に入らんちゅうのか?
  …はっ、もしやこんな古い豚の血やなくて、新鮮な人間の血が欲しいんやろか? う〜ん、ますます悪魔のような花やな」
がちゃ
ヒョヨン「今帰ったでぇ。はぁ、漁村ロケは船乗ったり朝鮮虫触ったりしんどいなぁ。刺身が美味いのだけが救いやけど」
ソヒョン「(チャンス!)あ、おねえ、お帰り」
ハグハグ
ヒョヨン「どないしたんや。珍しく歓迎してくれるやないけ(チク)。あんまり触ると魚臭いのがうつ…う、な、なんか、異常な眠気が…ううーん(どさっ)」
ソヒョン「うへへへ。これでエサが出来た。さぁスヨンⅡ、生き血を飲ませてやろうか? それともこのプリプリの太股を肉団子にして食わせてやろうかな」
スヨンⅡ「キショイことゆうなよ。聞いてるこっちがひくわ」
ソヒョン「ぴゃー、喋った。花のくせに喋りおったわ」
スヨンⅡ「まぁ喋る気はなかったけど、豚の血とか飲まされるし。今度は人の肉団子とかとんでもないことゆうさかい、さすがに断らなあかん思うてな」
ソヒョン「人の肉でもアカンの? ぴゃー、どんだけ貪欲な植物やねん」
スヨンⅡ「そこ、そこ。なんか誤解が生じとるようやけど、なんでウチがそんな鬼畜な肥料を欲しがる決めつけてるの?」
ソヒョン「そやかて、血の匂いに反応して、物欲し気にぱくぱくて」
スヨンⅡ「このままやったら飢え死にするから、正体バレてもええゆう思いでの、必死のアピールやったんや」
ソヒョン「正体ならもお判ったわ。自分、宇宙から来た異星人やろ?」
スヨンⅡ「(ギク)さ、察しのよろしいことで。そやけど、大して驚いてへんようやな」
ソヒョン「まぁ以前にもフラワーロック型とかオナホール型とか、宇宙人には会うたことあるからな」
スヨンⅡ「ああ、奴らか。奴らかて別に人の肉とか食わんかったやろ」
ソヒョン「そおいえばそうやな」
スヨンⅡ「見た目の印象だけで決めつけるのはやめてちょうだいよ」
ソヒョン「そやけど、皆既日食の日に突然現れるわ、何でも食いそうな顔(花)してるわ、通常の肥料じゃちっとも元気にならんわ、地球乗っ取りを企む悪魔の食人植物に決まっとると思うがな」
スヨンⅡ「まー確かにウチに液体肥料は無駄やな。お察しの通り、根やなくてこの口から食べるのも本当やし」
ソヒョン「そやろ? そやから遠慮せんとゆうたらええねん。この女、どうやって食べたい? 筋肉質やから生やとちょっと硬いかもしれんで」
スヨンⅡ「人間は食わへんて。お弁当の残りとか、そんなんでええねん」
ソヒョン「見かけによらずつつましいなぁ。今はサツマイモの皮しかないで」
スヨンⅡ「う〜ん、ちょっとさびしいけど、それで我慢するわ。いずれちゃんとしたもん食わせてや」
ぱくぱく、ごっくん
スヨンⅡ「ぴゃー、人間の食い残し、最高!」
ソヒョン「なんか、がっかりな宇宙生物やな」


ヒョヨン「う、ううーん」
ソヒョン「う、やばい、おねえが起きた」
ヒョヨン「(ふらふら)ちょっとチュヒョン、自分なんか企んどるやろ。麻酔針でいきなり眠らせるとは非道いやないの」
ソヒョン「こらまずいな。(ぼそぼそ)ちょっと、自分大人しくしとけや」
スヨンⅡ「腹ぺこや〜(ぱたぱた)」
ヒョヨン「わー、花が喋った!」
ソヒョン「うわ、なんて掟無用の生物や。あきれたで」
スヨンⅡ「もっとなんか食うもん頂戴よ」
ヒョヨン「こ、こりゃあ一体どおゆうことやねん」
ソヒョン「それが実は…」

ヒョヨン「また宇宙人てか? 前回みたいなハードな展開になるのは嫌やで」
ソヒョン「こいつはどうも、そんな大層な野望を抱いてる訳やなさそうや」 ← ヒョヨンをエサにしようとしたことは言わなかった
スヨンⅡ「♪ご〜は〜ん、ご〜は〜ん」
ヒョヨン「…確かにそおやな。しかし、スヨンⅡとはよお名付けた(笑)」
ソヒョン「やろ?」
ヒョヨン「こら、スヨンⅡとやら、飯が欲しいんか?」
スヨンⅡ「うん、うん(こくこく)」
ヒョヨン「ほんなら3回まわってワンと言えや」
スヨンⅡ「え、なんで?」
ヒョヨン「芸もなしに飯が食えるほど世の中甘うないど。ウチらかてギャラ貰うために毎日クルクルまわっとるんやから」
スヨンⅡ「ほえー、地球人て妙な風習持ってるなぁ。まぁええわ、(クルクル)ワン!」
ヒョヨン「わ、ほんまにやりおった」
ソヒョン「プライドはないみたいやな」
スヨンⅡ「プライドで飯は食えんからな」
ヒョヨン「その言葉、シカに聞かせてやりたいわ。まぁええ、ちゃんと芸見してくれたからご飯あげるわ」
スヨンⅡ「わーい(パタパタ)」
ヒョヨン「ちょうど漁村から貰うて来た鯛があるから刺身にしてやろう」
スヨンⅡ「ちょっとちょっと、そんな新鮮なもの食うたらお腹こわしてまうわ。ホンマに残りもんでええんやって」
ヒョヨン「そお? なんか張り合いのない宇宙人やな」
ソヒョン「やろ?」
がちゃん
テヨン「今、犬の鳴き声が聞こえたけど…わ、なんやその変な花は?」
ソヒョン「わー、テヨンねえにもばれた!」


もんぎゅもんぎゅ
ソニ「ごちそうさま」
ユナ「ごちそうさまでした」
スヨン「おかわり」
家政婦「はいはい。そやけど、あんたら、最近はキチンとゴミ出しとるみたいやね」
ティパニ「…? というと?」
家政婦「ここ2週間ばかり、マンションの管理人から生ゴミの分別で文句言われたことないからな」
ソヒョン「ちゅうと、それまではちゃんと分別出来てなかったんか」
家政婦「そらもお。ゴミ出し日の度に、管理人のおっちゃんからネチネチ嫌みゆわれてたんよ」
ヒョヨン「そらぁすんまへんでした。そやけど、これからは大丈夫や。生ゴミは一切出さんよって」
家政婦「いや出すのは構わへんのやけど、ちゃんと分けて指定日に出しなさいって話や」
ソヒョン「はーい。わかりました、ミタさん」
家政婦「ミタなくてナニーや。ちゃんと憶えてや」
テヨン「ごちそーさん。さて、そろそろ準備して行くか」
ティパニ「そやね」
スヨン「(さっ)おかわり」
テヨン「(がく)こいつは〜」
ヒョヨン「こいつこそ生ゴミ食うとけばええんや」


スヨンⅡ「(ぱくぱく)ぴゃー、美味い。今日の生ゴミは格別美味い」
ソヒョン「梅干しの種がいくつも入っとるからな」
スヨンⅡ「なるほど。それは健康になりそうや」
ヒョヨン「それにしても自分でかなったなぁ。もお本物のスヨンよりでかいんちゃうか?」
スヨンⅡ「毎日おいしい残飯仰山貰えるからな。は〜ここは天国や。ここにおるためなら、芸もいっぱい見せるで(くるくる)わんわん」
がちゃ
テヨン「今、犬の鳴き声が…」
ソヒョン「もおええて。正体わかっとるやろ」
テヨン「まぁな。そんなしょもない生き物に構っとらんでさっさと支度しい。バスが来るで」
ヒョヨン「へーい。ほなスヨンⅡ、ウチら仕事に行って来るで。帰りは遅うなるけど、ロケ弁の残り持って来てやるからな」
スヨンⅡ「わーい(ぱたぱた)」
ソヒョン「行ってきまーす」
ばたん

スヨンⅡ「ふ…うふふふ、行きよったか、アホどもが」
♪どんどん
スヨンⅡ「♪ウチを養えや ウチを養え、地球人ども〜 永遠に養うんや わかったか、このボケ!
パタパタ、クルクル
スヨンⅡ「♪あとちょっとの辛抱や ウチの触手が肩まで伸びて 自分と同じになぁったら〜
  ♪約束通り〜残飯はやめて〜 食人生物に成長できるんや〜
  ♪そしたら そしたら 自分ら全員食ってやるぞ 不良時代ども〜
うひゃひゃひゃひゃ〜〜〜〜
がちゃん
スヨンⅡ「…!(はっ)」
家政婦「おかしいわねえ、みんな出かけたはずやのに、この部屋から笑い声が聞こえたで」
スヨンⅡ「…(汗)」
家政婦「ぴゃー、でっかい花。ソヒョンちゃんたら、こんな妙な植物飼ってたんか」
スヨンⅡ「…(さっさと出て行ってくれへんかんぁ、ウチじっとしてるの苦手な植物やねん)」
家政婦「これなにかなぁ? ナス科の変種かなにかかしら」
スヨンⅡ「…(はっ、おばはん、手に生ゴミの袋持ってはる。あれだけの量があれば、一気に成長して食人植物になれるで)」
家政婦「(ごそごそ)でも、実みたいなものはついてないわねえ。この変な顔みたいな花を食べるのかしら」
スヨンⅡ「…(もうちょっと、もうちょっとこっちに来てや。そんでその袋をもっとこっちに…。その時がおばはん、自分の最後やで。ウチの食人第1号はこの家政婦はんや)」
家政婦「葉っぱとかはサラダに出来そうやけどなぁ。根っこをよく見てみようかしら(ぬっ)」
スヨンンⅡ「今や!(パタパタ)」
♪キャーーーー!!


もんぎゅもんぎゅ
スヨン「おかわり!」
テヨン「ウチも」
ジェシカ「今日の飯は格別美味いなぁ。ウチもお代わり貰おうっと」
家政婦「はいはい、仰山食べてえな。ソヒョンちゃんの部屋にあった変な植物で作った野菜炒めと山菜風天ぷらやで」
ソヒョン「えー、ミタさん、あれ処分したん?」
家政婦「そやかてもお、部屋があれでいっぱいになっとったやんか。掃除も出来へんから根っこごと引き抜いたったわ」
ソヒョン「ぴゃー、飼い主の意見も関係なしかい」
ヒョヨン「家政婦にとっては家事が最優先やからなぁ」
ソヒョン「それにしてもスヨンンⅡの奴、こんなに美味かったとはなぁ」
ヒョヨン「ホンマや。また皆既日食の日に中国人の店から買って来いや」
ソヒョン「そやな。よーし、次からは株を増やして毎日食えるようにしたろ」
家政婦「頼むわ。そしたら買い物行く手間省けるから」
全員「わっはっはっは」
ナレーション「こうして少女時代が知らないうちに、地球の危機は救われた。ありがとう、家政婦のミタ
家政婦「(しー)ミタちゃうって。実はウチが超能力者で、スヨンンⅡの正体を知ってたってことは秘密やで」







※『Little Shop of Horrors』…1986年に公開されたアメリカのミュージカル映画フランク・オズ監督、リック・モラニス主演。
 宇宙から地球を征服するためにやってきた食人植物を巡って展開するホラーコメディ。
 もともとは1960年に低予算恐怖映画の巨匠ロジャー・コーマン監督がシリアスなホラー映画として撮った。
 まったく大した映画ではなかったが、その後1982年にオフ・ブロードウェイで脚本・作詞:ハワード・アッシュマン、作曲:アラン・メンケンによってミュージカル舞台化され、大ヒットした。
 フランク・オズ版はこの舞台版を映画化したものである。
 フランク・オズは『セサミ・ストリート』などで人形繰演者、声優として活躍していたマペット職人。俳優としても『ブルース・ブラザーズ』などでとぼけた演技を見せている。
 師匠のジム・ヘンソンと作った人形映画『ダーク・クリスタル』から監督としてのキャリアを踏み出した。
 『Little Shop of Horrors』に起用されたのは、この作品が数多くのからくりを使用するためで、今のようなCG全盛期なら別の監督になっていたろう。
 結果的にフランク・オズは見事な演出手腕を見せ、『Little Shop of Horrors』は世界的にヒットした。未だにファンが多い映画である。
 今回使った曲の元ネタは…
     『Da-Doo』
     『Feed Me』


※菱沼聖子…佐々木倫子の漫画『動物のお医者さん』に登場するH大学獣医学部の院生。一応ヒロインだが主人公と恋愛的な発展はない。
 低血圧、低体温で、やたらゆっくりと行動する。血液が大好きで、遠心分離器にかけた血液の試験管をペタペタするのがたまらないらしい。
 彼女の飼ってるペルシャ猫がフクという名前で、作者の飼っていた長毛雑種猫もフクと名付けられた。
 フジテレビのドラマでは和久井映見が好演した。 


※家政婦のナニー…1970年にアメリカABCで制作されたTVドラマ『ナニーと教授』に登場する超能力家政婦。
 日本では1971年にNHKから『ぼくらのナニー』と言うタイトルで放送された。
 男やもめエヴァレット教授にはいたずら好きの3人の子どもがいて、家政婦が長続きしない。そこにイギリスから不思議な家政婦ナニーがやってくる。
 ナニーは人の心を読んだり、動物と話が出来たりする超能力者で、その能力によってエヴァレット家に降りかかる数々の事件を解決していく。
 だがもちろん彼女が超能力を持っていることは誰にも秘密なのである。
 ちょっと『メリーポピンズ』や花郁悠紀子の『アナスタシアのおとなり』を思わせる、アットホームなファンタジーコメディで、
 ナニー役を映画『お熱い夜をあなたに』のジュリエット・ミルズが好演している。
     『NANNY AND THE PROFESSOR』
 同じ1970年に筒井康隆が、テレパシストの家政婦を描いた連作『家族八景』を書いているのはさすが。